吸着フィルター用活性炭膜

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研究開発部 メンブレン開発グループ
小島 恭平

1. はじめに

 近年、化学・製薬や自動車・機械製造の分野で発生するVOCsの回収や半導体・FPD・太陽電池製造における歩留まり改善のために、製造環境内のガス状汚染物質を低減させることは不可欠なものとなっている。また、様々な工業分野の製造工程の中で、酸、アルカリ、有機系ガスの除去を行っている。このような背景により、当社では、吸着用フィルターに用いる吸着フィルター用活性炭膜の開発を進めている。

2. 吸着フィルターに求められる性能と当社の試み

 一般的に吸着フィルターの吸着材としては、活性炭粉末、活性炭素繊維、化学吸着材、イオン交換繊維などが使われている。その中で、活性炭は吸着容量が大きく、吸着物質の脱離が少なく、多くの用途で使用されている。吸着フィルターには、ガス吸着性能を保ちながら、通気性が高く、圧力損失の少ない構造が要求される。フィルターの構造は、処理空気との接触確率を高め、吸着性能が高められるように、ハニカム構造、プリーツ構造、ペレット充填構造にしたものがある。これらのフィルターの問題点は、構造体の体積が大きいことや、ろ材を成型するためにEVAなどの接着剤が使用され、接着剤から揮発成分が出ることである。
 当社では、通気性を向上させるとともに、内部の活性炭表面を有効活用して吸着性能を向上させた吸着フィルター用の活性炭膜の開発を行っている。
 多孔構造を持つシートを作製するために、シート化する前工程の材料に造孔材を配合し、シート化の後工程で造孔材を除去する方法を用いた。シートの作製は当社既存技術の成形法で行った。これはPTFE樹脂バインダーの繊維化によって活性炭を高充填する連続圧延の成形技術である1)
 本報では、通気度を有し、ガス除去率が90%以上のガス除去フィルター用吸着シートの作製を目標とした開発内容について紹介する。

3. サンプルの作製及び評価方法

3-1)サンプルの作製
 活性炭はアウトガスの放出が少なく、高い吸着性能を持つ、ヤシガラ系水蒸気賦活の活性炭を用いた。粒径は膜の成形に適した比較的小さい粒径約 20μmの活性炭を用いた。この活性炭の比表面積は約 1350m2/gである。活性炭、PTFEバインダー、造孔材を混合し、当社独自の圧延製造工程で、厚み2mmの活性炭膜を作製し、シートに含まれる造孔材を除去して開発品を作製した。この多孔膜の通気性を制御するため、配合する造孔材の量を調整した。
 また、各性能を比較するため、市販品をリファレンスとした。これは、不織布に約 300~600μm 程度の粒径の粒状活性炭を接着したペレット構造のフィルターである。
3-2)試験条件
 各サンプルの多孔性構造を確認するため、電子顕微鏡(SEM:日立製作所製S-3400N)を用い、倍率 50、100 倍により観察を行った。
通気性は通気度測定器(TEXTEST 社製 FX3300)によって、圧力125Paで、約 100cm2の面積のシート面に対して垂直方向のエアーの通気性を確認した。
 ガス吸着特性(初期5分後のガス除去率及びライフ特性)は、Figure1によるガス吸着測定装置により行った。開口100mm角のチャンバーの間に約 120mm角の試験サンプルを挟み、30ppmのトルエンガスを用い、面風速 0.1L/secで通気し、チャンバーの入口側と出口側のトルエンガスの濃度を確認し、以下の算出式により除去率を算出した。
 ガス除去率(%)=(入口側濃度-出口側濃度)÷入口側濃度×100
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4. 結果と考察

4-1)シートの構造
 Figure2, 3のSEM写真は各種サンプルの微視構造を示している。通気性を向上させた開発品のSEM写真(Figure2)の断面写真より、造孔材が除去されたのちに出来る凹凸が見られた。
 一方、市販品は、SEM 写真(Figure3)より、不織布の間に粒径300~600μmの粒状の活性炭が挟み込まれている構造であることが確認された。
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4-2)特性
 Table1に各サンプルの特性を示す。
 開発品の初期ガス除去率はTable1に示す通り、出口側よりガスが検出されず、100%となった。市販品のガス除去率は88%となった。
 また、Table1に示す通り、開発品のガス除去率は、約1時間経過後に99%の除去率となった。
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 これは、シートに微細な孔が多数空いていることで、活性炭シートの膜の内部迄、活性炭の吸着性能が発揮されていることと、開発品の粒度が約20μm、目付が350g/m2で、市販品の粒度が約300~600μm、目付が150g/m2であり、ガスが吸着する面積が開発品の方が大きいことが理由と推測する。
 造孔材の配合量とシートの密度の調整を行うことで、通気性フィルタとして使用できるレベルの通気性の制御と吸着性のバランスを調整出来ると考える。

5. まとめ

 通常のPTFEバインダー活性炭シートを、造孔材を使用した成形により多孔化し、通気性を向上させた。この通気型ガス吸着活性炭シートは、初期におけるトルエンのガス除去率が100%であった。また、1時間経過後のトルエンのガス除去率は99%のガス除去率であった。

6. おわりに

 今回紹介した吸着フィルター用活性炭膜は、粒径が細かい活性炭を用いた、多孔性である構造で、優れた初期ガス除去率とライフ特性であることが確認できた。また、アウトガスの脱離も少なく、様々な環境で使用されるガス除去用途の濾材として、各分野で利用されることを期待する。

7. 参考文献

1) 程飛, 秋山大二郎, 吉澤昌一, バルカー技術誌, No.13, 2-5(2007)

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