高機能ノンアスベストシートガスケット「ブラックハイパー№GF300」

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製商品開発部
黒河 真也

1.はじめに

 近年の非石綿化の流れを受けて、我々ガスケットメーカーでは石綿ジョイントシートや石綿うず巻き形ガスケットを代替すべくノンアス®製品を順次上市してきた。
 そのうち、うず巻き形ガスケットやメタルジャケットガスケットなどのセミメタリックガスケットでは、石綿製品と同等の性能を有する製品が開発・販売されており、市場でも多くの実績を上げつつある。
 一方、シートガスケットでは、各ガスケットメーカーより、石綿ジョイントシートを代替すべく、耐熱性有機繊維や無機繊維などを配合したノンアスベストジョイントシートが上市されているが、ゴム成分の熱硬化現象が顕著であるため、100℃以上では、ガスケット厚さや初期締付面圧など、使用上の制限を設けており、高温域での使用実績は多くないのが実状である。また、ノンアスベストジョイントシート以外のシートガスケットとしては、膨張黒鉛シートガスケットやフッ素樹脂シートガスケットが各社からラインアップされているが、取扱性に難があることや応力緩和が大きいなど、それぞれに問題を有しており、石綿ジョイントシートを置き換える製品にはなりえていない。
 本報では、石綿ジョイントシート代替が期待される製品として、上述したノンアスベストシートガスケットのウィークポイントを改善し、高温域での使用を可能にしたブラックハイパーGF300について、その特徴及び特性を紹介する。

2.非石綿化の動向

 近年、人体に対する石綿の悪影響を考慮し、諸外国では石綿製品に関する規制が強化されてきた。欧州では、2005年には石綿含有製品の販売および新規使用の禁止、2010年には交換部品を含む全面使用禁止を、1999年に決定している。また、米国では、石綿製品の法的規制は存在していないものの、石綿訴訟が活発であり補償問題が各メーカーの経済負担を大きくしていることなどから、実質的に石綿は使用されていない。このような石綿規制の動きは、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、ブラジルなど各国にも広がりつつある。このため、世界レベルで石綿の使用量は激減してきている状況である。
 こうした流れの中、日本では、労働安全衛生法施行令が改正され、2004年10月以降、10品目(1.石綿セメント円筒、2.押出成形セメント板、3.住宅屋根用化粧スレート、4.繊維強化セメント板、5.窯業サイディング、6.クラッチフェーシング、7.クラッチライニング、8.ブレーキパッド、9.ブレーキライニング、10.接着剤)を対象として、石綿を1%以上含有する製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止された。今回の規制では、シール材は規制対象外であるが、今後、対象製品の見直しが行われる可能性はある。
 あわせて、2004年2月には厚生労働省より各ユーザー業界団体に宛てて、石綿製品の代替に関するスケジュールについての調査が行われており、非石綿製品への移行は加速していくものと予想される。
 また、規制に至らない場合も、石綿の流通量の減少に伴い、石綿の供給不安や価格の高騰、石綿品質の低下など、多くのリスク要因が存在している。

3.ブラックハイパー№GF300の特徴

 ブラックハイパー№GF300は、独自のコンセプトと新規の特殊加工技術を導入し、黒鉛とPTFEを主要構成材料とした耐熱性、耐薬品性に優れるノンアス®シートである。
 ゴムバインダーを用いていないので、熱硬化に伴う割れや経時劣化が生じないことが最大の特徴である。

(1) コンセプト
○材料劣化からの解放
 熱硬化や経時劣化の要因となるゴムを含んでいないため、材料的な劣化を起こさず、従来のノンアスベストシートガスケットの使用が困難であった100℃以上の高温領域(最高使用温度300℃)での使用が可能となった。

○良好なハンドリング性の実現
 柔軟なPTFEをバインダーとして配合することで、従来の膨張黒鉛シートの欠点である脆さや傷つきやすさを解消した。

(2) 製作寸法
 JIS規格品、JPI規格品、その他各種寸法打ち抜き品
 最大外径:φ1,235mm
 呼び厚さ:1.0、1.5、2.0、3.0mm
 色  調:ブラック(プリントカラー:ホワイト)

(3) 用途・適用流体
p6-2
(4) 設計資料
 m、y値は、JIS B 8265付属書3に定められている石綿ジョイントシートの値が適用できる。
p6-3
(5) 使用可能範囲
p7-2
p7-1

4.ブラックハイパー№GF300の特性

(1) ガスケット一般物性
 表4に、ブラックハイパー№GF300の物性を示す。応力緩和特性は、石綿ジョイントシートに比べても小さく、高温下でも長期間使用できることを示す。また、耐油性および耐燃料油性については、ゴムバインダーを使用しないことにより、石綿ジョイントシート以上に優れた特性を有している。
P7-3
 一方で、柔軟性は石綿ジョイントシートより劣り、ジョイントシートのように円筒に丸めての運搬は難しいが、使用上の問題ないと考えられる。
 引張強さについては、GF300は石綿ジョイントシートの約1/3と小さく、後述する圧壊特性に影響を与えており、フランジとの接触面にペーストを塗布する場合は締め付けに注意が必要である。

(2) 圧縮復元特性
 図2にブラックハイパー№GF300の圧縮復元曲線を示す。GF300は、石綿ジョイントシートと比較して、やや硬い傾向があるが圧縮率の違いは約2%であり、実用上問題ないレベルといえる。
p8-1
(3) 常温シール特性
(3)-1 常温ガスシール特性
 ブラックハイパー№GF300の常温ガスシール特性を表5に示す。GF300の常温シール特性は、石綿ジョイントシートと同等で、シートガスケットとして充分な特性を有している。
 但し、ガスシールの場合は、石綿ジョイントシートと同様、ペーストの使用が望ましい。その際は、内
径断面への塗布が推奨される。
●試験方法
 圧縮試験機により、ガスケットに所定面圧を与えた後、窒素ガス内圧1.0MPaを負荷し、10分放置後、石鹸膜流量計により漏洩測定を行った。
●試験条件
 試験寸法   :JIS 10K-25A、t1.5mm
 圧縮方法   :圧縮試験機
 フランジ面粗度:Ra=5.7μm、Rz=22μm
        (中心値)
 試験流体   :窒素ガス(内圧1.0MPa)
 漏洩検出方法 :石鹸膜流量計
p8-2
 測定感度   :1.7×10-4Pa・m3/s(0.1cc/min相当:測定感度未満を検出せずとする)
(3)-2 常温液体シール特性
 ブラックハイパー№GF300の常温液体シール特性は、既存の石綿ジョイントシートと同性能であり、充分なシール性能を有している。
●試験方法
 ボルト締めによりガスケット面圧14.7MPaを与えた後、水圧5.1MPaを負荷し、10分放置後、濾紙をガスケット外周部に接触させ、濡れを観察することにより漏洩の有無を確認した。
●試験条件
 試験寸法   :JIS 10K-25A、t1.5mm
 圧縮方法   :ボルト締結
 フランジ面粗度:Ra=2.4μm、Rz=12μm
        (中心値)
 試験流体   :水道水(内圧5.1MPa)
 漏洩検出方法 :濾紙による漏洩水の検出
p8-3
(4) 熱サイクルシール特性
 熱サイクルシール特性はガスシール、液シール共に図3の加熱サイクルパターンを負荷して、シール性能を確認した。
p8-4
(4)-1 熱サイクルガスシール特性
 ブラックハイパー№GF300の熱サイクルガスシール特性は、最高使用温度300℃での加熱サイクルを負
荷した場合も良好であった。
●試験方法
 ガスケットをフランジ間に装着、ボルト締結し、図3の加熱サイクルを与え、常温時に内部流体を導入し、10分放置後漏洩を検出した。
●試験条件
 試験寸法   :JIS 10K-25A、t1.5mm
 圧縮方法   :ボルト締結
 締付面圧   :34.3MPa相当
 フランジ面粗度:Ra=2.4μm、Rz=12μm
        (中心値)
 試験流体   :窒素ガス(最高内圧1.0MPa)
 漏洩検出方法 :水没法
 測定感度   :1.7×10-4Pa・m3/s
p9-1
        (0.1cc/min相当:測定感度未満をSealとする)
(4)-2 熱サイクル液体シール特性
 ブラックハイパー№GF300の熱サイクル液体シール特性は、最高使用温度300℃での加熱サイクル負荷後も良好であった。
●試験方法
 ガスケットをフランジ間に装着、ボルト締結し、図3の加熱サイクルを与え、常温時に内部流体を導入し、10分放置後濾紙をガスケット外周部に接触させ、濡れを観察することにより漏洩の有無を確認した。
●試験条件
 試験寸法   :JIS 10K-25A、t1.5mm
 圧縮方法   :ボルト締結フランジ
 締付面圧   :14.7MPa相当
 フランジ面粗度:Ra=2.4μm、Rz=12μm
         (中心値)
 試験流体   :水道水(最高内圧1.5MPa)
 漏洩検出方法 :濾紙による漏洩水の検出
p9-2
(5) 圧壊特性
(5)-1 ペーストを塗布しない場合・内径断面にのみペーストを塗布した場合の圧壊特性
 ブラックハイパー№GF300が締付時に圧壊が発生する面圧は、t1.5にて98.0MPa以上、t3.0にて73.5MPa以上である。石綿ジョイントシートと比較すると、圧壊面圧は低くなっているが、ガスシールに推奨されるガスケット面圧34.3MPaの2倍以上の面圧に耐えうる圧壊特性を有している。
●試験方法
 ガスケットをフランジ間に装着し、圧縮試験機にて所定面圧に相当する荷重を負荷後、取り出し亀裂・異常変形の有無を確認した。亀裂等なければ一段階上の面圧を負荷し、発生していればその面圧を圧壊面圧とした。
●試験条件
 試験寸法   :外径100×内径64mm
 フランジ面粗度:Ra=5.7μm、Rz=22.0μm
        (中心値)
 面圧負荷段階 :①49.0MPa、②58.8MPa、
         ③73.5MPa、④98.0MPa、
         ⑤122.5MPa、⑥149.0MPa、
         ⑦196.0MPa
 使用ペースト :バルカーシールペースト
p9-3
(5)-2 フランジ-ガスケット接面にペースト塗布した場合の圧壊特性
 フランジ-ガスケット接面にペーストを塗布した場合、ブラックハイパー№GF300に圧壊が発生する面圧は、t1.5にて58.8MPa以上、t3.0にて49.0MPa以上であり、これら以下の面圧では圧壊を生じなかっ
た。通常の使用においてはこれら以下の面圧で使用されることから、ペーストを塗布したとしても使用上圧壊が問題になる可能性は低いと思われる。
 ただし、ガスシール性能を向上させるためにペーストを使用する場合は、内径端面に塗布することが望ましい。フランジ-ガスケット接面に塗布する場合は、片締めや締付過多に注意が必要である。
p10-1
(6) 高温硬化割れ特性
 ブラックハイパー№GF300では、300℃×24時間の加熱によっても硬化現象が生じておらず柔軟性を保持していた。これは、熱劣化の要因となる、ゴムバインダーを含んでいないことによる。
 一方、石綿ジョイントシートおよびノンアスジョイントシートでは加熱による硬化現象が顕著に見られることから、熱硬化現象に関してブラックハイパー№GF300が優位にあることが確認された。
●試験方法
 加熱後の試料をφ60、φ90、φ120、φ150の円筒に半周巻きつけ、割れ発生の有無を確認した。(○割れなし、×割れ発生)
●試験条件
 試験寸法:長さ100mm、幅20mm、
      厚さ1.5mm
     (長手方向が繊維方向と
      直角になるよう試料作製)
 加熱条件:300℃、24時間
p10-2
(7) 溶出ハロゲンイオン濃度測定
 ブラックハイパーGF300の溶出塩化物イオン濃度は、防食タイプである石綿ジョイントシート(1500AC)よりも低濃度であった。GF300はPTFEを主要構成材料のひとつとしているが、フッ化物イオンの溶出は少なく、塩化物イオンとの合計でも35ppmと実使用上問題ないと考えられる水準である。
●測定条件
 抽出条件:100℃、2時間
 測定機器:イオンクロマトグラフ(DX-500型、
      DIONEX 社製)
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(8) 耐芳香族系溶剤性
 既存の石綿ジョイントシートは、含有するゴムの耐薬品性の問題から、ベンゼンなどに代表される芳香族系溶剤には基本的に使用不可(条件により使用可能)としている。
 これに対し、ブラックハイパー№GF300は、ゴムバインダーを含んでいないため、耐溶剤性に優れている。表11のデータでも、浸漬後の厚さ増加率・重量増加率ともに極めて小さく、芳香族系溶剤に耐性を有していることがわかる。
●測定条件
 浸漬時間:24時間
 試料厚さ:t1.5mm
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(9) 低温シール特性
 ブラックハイパー№GF300の低温特性は良好であり、最低-196℃にて常温と同じシール性能を保持していた。これは低温シール性に優れているといわれる膨張黒鉛シートと同水準である。
●試験方法
 ガスケットをフランジ間に装着、ボルト締結し、低温槽あるいは液体窒素槽に浸漬し、フランジ温度が安定した後、圧力降下法にて漏洩量を測定した。
●測定条件
 試験寸法   :JIS 10K-25A、t1.5mm
 締付面圧   :40MPa相当
 フランジ面粗度:Ra=2.4μm、Rz=12μm
        (中心値)
 試験流体   :ヘリウムガス
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5.おわりに

 本報では、シートガスケットのノンアス化の切り札との位置付けで製品化した、ブラックハイパー№GF300を紹介してきた。ご紹介してきたように、この製品は、熱硬化および経時劣化が生じないといった、既存のノンアスベストシートガスケットにはない特長を持ち合わせ、これまで、ノンアス化の最大の懸案であった100℃以上での使用を可能にしたノンアスシートガスケットである。
 今後、国内外ともに、石綿製品の規制は強化されることが予想され、環境問題、企業コンプライアンスの観点からも、ノンアスベスト化は避けられないものと考えられる。
 現時点では、石綿ジョイントシートの供給に問題はないが、変化に際しての混乱がないよう、早期にノンアスベストシートガスケット使用の目途をたてられることをお勧めしたい。
 当社の、ブラックハイパー№GF300をはじめとする各種のノンアスベスト製品が、ノンアス化をスムースに進めることと確信している。また、そのための様々なサポートを行っていく所存である。

6.参考文献

 山中幸、黒河真也, 環境に優しいシール技術 新しいノンアスベストシートガスケット, プラントエンジニア, Vol.36, No.2, Feb., 2004

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