バルカーグループの製品含有化学物質管理体制

P6-1
日本バルカー工業株式会社
地球環境室 砂川 里美

1. はじめに

 当社では現在、グループ全体の化学物質管理体制構築を行っており、製品の含有化学物質情報を一元管理するためのデータベースを導入し、生産子会社においては、化学物質管理マネジメントシステムの構築を推進している。2010年度末には仕入品を含めたバルカーブランド製品の製品含有化学物質情報の一元管理と、化学物質管理体制を完成する予定である。
 本稿では、その概要を示すとともに、構築作業の現状を概説する。

2. 製品含有化学物質規制の動向

 製品含有化学物質に関する規制は、人体や環境に悪影響を与えるという観点で、以前から各国で取り組まれていたが、わが国への影響が大きくなり始めたのは、EUでELV指令という自動車に関する規制が発効されてからである。その後もEUを中心に新しい規制が発効されている。(Fig.1)
P6-2
 Fig.2に、RoHS指令を例にとってこれらの規制が一般的にどういうものかを簡単に説明する。
 EU加盟国内において、これらの物質が指定値を超えて含まれた電子・電気機器を上市することはできないというものであり、わが国の電子・電気機器メーカーはEUへの輸出品に使用される部品1点1点について、含有化学物質の調査を開始したのである。
P6-3
 わが国メーカーの一般的な調査対応は、製品を構成する部品の含有化学物質について部品メーカーが管理し、その部品の原料の含有化学物質は原料を作っている原料メーカーが管理するという形で、サプライチェーン全体で取り組むという方向で進められている(Fig.3)
P7-1
 当社はここでいう部品メーカーの位置になり、一般に川中と呼ばれるメーカーであるが、川下メーカーである最終製品メーカーから求められているのは、信頼性のある情報を提供するために川上である仕入先を含めた管理体制を構築することである。
 これらを、組織的・効率的に行うため、業界が対応を始めている。
 電子・電気メーカーの有力各社74社が加盟するJGPSSI(グリーン調達調査共通化協議会)では、製品の製造に使用する材料・部品に有害な化学物質を含まないようにサプライヤーに対する調達のガイドラインを策定し運用している。また、川上・川中・川下の各メーカー311社が加盟するJAMP(アーティクルマネジメント推進協議会 )では国際的な化学物質管理の潮流に適切に対処するため、製品に含有する化学物質等の情報を適切に管理し、サプライチェーンの中で円滑に開示・伝達するための仕組みを推進している。

 現在、わが国の製品含有化学物質に関する法規制には労働安全衛生法、毒劇法、PRTR法の3つの法律で規制されている物質を対象としたMSDS制度があるが、EU規制などの対象物質全てに対応しておらず固形のものは基本的に対象外であるため、この制度では各規制に対応できていない。
 しかしEUでは全製品に関する規制であるREACHが発効、わが国でも2002年に開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議で合意された『2020年までに化学物質の製造・使用が人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化すること』という目標に従い、全製品を対象とした製品含有化学物質規制に進むことが予想される。

3. 当社の環境への取組

 当社は、THE VALQUA WAYという理念(Fig.4)のもとで企業活動を行っているが、環境への取組も例外ではない。4 つの経営理念には地球環境を大切にする企業活動を基本とし持続的社会の形成を目指していくという経営の意思が盛りこまれており、これらを受けて環境理念を制定している。(Fig.5)
P7-2
P7-3
 環境への取組の中で、本稿のテーマである化学物質管理体制構築は、環境方針2「国内外の法律、規則、条約、協定などを遵守するとともに自主基準を設け一層の環境保全に努める」こと、環境方針3「他産業及び社会との連携を図り、環境に配慮した商品の創造及びサービスの提供に努める」ことを実現するために不可欠なものである。

4. 化学物質管理体制

 2項で紹介した含有化学物質の調査対応は、個別の調査に対してその都度サプライチェーンを遡って原材料メーカーに確認した上で回答するという対応でも可能である。しかしながら、これは当社の理念である「地球環境を大切にする企業活動」ではない。
 製品が製造されて、廃棄されるまでの現場、現実を考えた時にその間の化学物質の影響にはさまざまのものがある。
 ・製造中に取り扱う作業者への影響
 ・使用中にプロダクトに接触することによる影響
 ・使用中に使用者に接触することによる影響
 ・廃棄時に土壌、水系、大気中(すなわち環境中)へ放出されることによる影響
 当社では化学物質が人体・環境に与える影響の重大性を考慮し、ここで発生するリスクを把握し排除することを目的に、全製品の含有化学物質管理が必要であると判断した。
 このような観点から、当社の化学物質管理は、法規制の遵守だけでなく、世の中の情報、新しい知見などを積極的に取り入れ、環境や人への影響を考慮し自主基準を設け、当社の製品にはそれらを含有しない状態を作り出すことと、設計・開発時の管理、購買管理、工程管理、変更管理などを通じて、含有化学物質情報が常に正しい情報である状態を作り上げることで、保証ができる体制を実現することを目標としている。
 これらを実現するため、グループ生産子会社には本社の設計部門と連携して、前述のJGPSSI(グリーン調達調査共通化協議会)のガイドラインに従った化学物質管理マネジメントシステムを構築することとした。

 このガイドラインは製品に含有される化学物質情報を適切に管理し、情報を円滑に伝達するためにサプライチェーンに関わる企業が実践すべき事項をまとめたものであり、その実施項目は、品質及び環境マネジメントシステムとの技術的対応が示され、すでに品質もしくは環境マネジメントシステムを構築している組織が、製品含有化学物質管理体制を構築したり、体制の有効性を確認する際に参考とすることもできる。(JGPSSI製品含有化学物質管理ガイドライン第2版より抜粋)当社の生産子会社は品質及び環境マネジメントシステムを構築しており、このガイドラインに準拠した体制を構築することが効率的であると判断した。
 また、含有化学物質情報は全製品の原材料、配合の情報を1つのデータベースで管理することとした。データベースに必要な要件は以下の通りであった。
 ・当社製品には部品を組み立てて製品にする組立品と、原材料を混ぜ合わせて均質素材
  として扱う必要があるゴムやジョイントシートがあり、これらを区別して取り扱うこと。
 ・均質素材となるための配合情報が貴重なノウハウであるため、相応のセキュリティーが
  必要であること。
 ・管理するべき化学物質が随時変化することが考えられるため、それに対応できること。
 ・製造工程の中での揮発物質の管理ができること。
 ・多数の拠点で使用できること。
 本年4 月に、数社のデータ管理システムを検討し、これらの必要要件を満足するデータ管理システムを導入した。現在は当社製品の配合情報、原材料情報をデータベースに蓄積中である。当社ブランドの全製品について、これらのデータ蓄積が完了すれば、設計・開発、購買、工程内での変更に伴う含有化学物質情報の変化を各部門で共有することで、管理されたデータを随時アウトプットすることができるようになる。
 さらにサプライヤーへの働きかけを行い、化学物質の含有情報、不使用保証を入手しその情報を社内の部門で共有し活用することが当社の目指す化学物質管理のあるべき姿である。

5.おわりに

 含有化学物質管理体制構築は環境方針を制定した時点(2002年)より構想していたが、2項で紹介した世界的な動向に遅れを取らないよう、昨年度よりデータベース構築を開 始し、本年度には化学物質管理体制を生産子会社に構築している。
 データの蓄積はサプライヤーの協力が不可欠であり、これらを収集するためにはある程度の期間が必要であることが予測されるため、2010年度末にはあるべき姿に到達するべく、現在はデータの蓄積と管理体制を構築中である。

ページの先頭へ戻る
ページの先頭へ戻る