ダイアフラムシール

ダイアフラムシール

1. はじめに

 近年、産業界の急速な技術発展に伴い、広い分野で液体や気体などの流体を扱う回転機器にとって、軸受と共にシールが必要不可欠な構造部品となっている。各種流体機器に採用されているシールには数多くの種類があるが、メカニカルシールを始め、オイルシール、グランドパッキンなど各種機器に適合したシール方式が選定され、使用されている。
 しかし、これらのパッキンは機器のパッキン装着部の精度不良によるトラブルの発生が少なくない。回転機器は高速回転の場合、その性質上、構造、設計などに留意され、高精度に保持されているが、低速回転機器、特に長尺軸を使用した機器においては、高精度とは言い難いものがある。
 そこで、低速回転機器で軸封部精度が低いという、シールにとっては過酷な条件下に最も適していると言える「ダイアフラムシール」について紹介する。

2. ダイアフラムシールの構造と特長

 ダイアフラムシールはFigure1に示すように、ゴム製の「ダイアフラム」に「シートリング」が挿入された非回転部品と、「Oリング」(シャフトパッキン)が装着された「シールリング」に軸固定用の「セットボルト」が使用されている回転部品で構成され、一般のメカニカルシールと比較し、簡単な構造になっている。
 ダイアフラムは、機器内流体の漏洩防止用ガスケットとシートリング挿入部のシールを兼ね、更に機器内の流体圧力を利用してシートリングの密封端面に面圧を与える機能を持っている。
 シールリングはシートリングの相手摺動面であると同時に、回転軸からの漏洩を防止するOリングが装着されている。
 ダイアフラムシールは、スプリングを持たないアウトサイド形(摺動面の内周から外周方向へ向かって漏れようとする流体をシールする形式)であり、一般のメカニカルシールと比較すれば、次のような特長がある。
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 (1)  構造が簡単で構成部品が少なく、管理、保守が容易である。
 (2)  ダイアフラムはゴム製で柔軟性に富み、シートリングの追従性が優れているため、軸ぶれ、取り付け面と軸芯との直角度、芯ずれ、振動など機器精度の誤差にシール性能が左右されにくい。
 (3)  機器への装着位置は、大気側のシールリングにより容易に調整でき、装着に特殊な技術を必要としない。
 (4)  外向流れ形(アウトサイド形)構造で、大気側で部品の全体が観察でき、シール寿命、部品の不具合などによる取り替え時期の把握が容易である。
 (5)  機器フランジなどに直接取り付けができ、特別なスタフィングボックスを必要としない。
 (6)  構成部品が少なく、構造が簡単なため、装着長さが短い。
 (7)  内圧を利用して摺動シール面に面圧を与える構造で、多少の装備位置の誤差も吸収できる。(長尺軸を使用している場合、温度差による回転軸の伸縮も許容範囲内で吸収可能)
 (8)  端面シール構造であるため、回転軸を摩耗させることがない。

3. ダイアフラムシールの適用機器

 ダイアフラムシールはその構造上、軸ぶれ、あるいは非回転部品の密封端面が軸芯に対して直角に装着するのが困難な機器であっても、摺動材は偏摩耗することがなく、良好なシール効果を長期間発揮することができる。また、流体圧力による受圧面積が非常に大きなアンバランス形のシールであるため、低速回転で流体圧力が低い機器に適している。
 ダイアフラムシールは、以上のような特性を有効に生かして、様々な産業分野で広く使用されている。
 次に示すのは、ダイアフラムシールが採用されている機器の代表例である。
・ 液体シール用ダイアフラムシールの適用機器、船尾管、洗浄機、攪拌機、メッキ槽、染色機器など
・ 粉体、気体シール用ダイアフラムシールの適用機器、スクリューフィーダー、ロータリーバルブ、乾燥機、攪拌機、ミキシング機器など
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 一例として、某社のスクリューフィーダーに採用されたダイアフラムシールについて紹介する。(Figure3)
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 このスクリューフィーダーは、低圧、低速回転でシール流体が粉体であり、設置当初軸封にグランドパッキンが使用されていたが、約3ヵ月程度で漏洩が多くなり、パッキン及び軸スリーブの新規製作、交換などを頻繁に行いながら使用していた。漏洩の原因は明らかではないが、軸ぶれが0.1mmから大きなもので1mmもあり、グランドパッキンの軸への追従性が限界を超えていたことと、流体が粉体状の物質であったことなどから、パッキン、スリーブなどが早期に摩耗したことも原因になったのではないかと考えられている。
 そのような状況から、ダイアフラムシール方式に改造後、軸封部からの漏洩はほとんどなくなり、寿命も短いもので1年、長いもので2 年以上の使用に耐えている。
 寿命のばらつきに大きな変化があるのは、仕様条件やそれぞれの機器の精度誤差によると考えられ、特に軸ぶれによる影響を受けていることが推定できる。
 また、某社の樹脂製フィルムの洗浄装置においては、当初フィルムの搬送ローラーの軸シールとして、グランドパッキンが採用されていたが、軸ぶれが大きく1~2ヶ月で漏洩が発生し、頻繁にパッキンと軸スリーブの交換を余儀なくされていた。ダイアフラムシールを採用してからは1年以上の使用に耐えており、シール交換にかかるコストを大幅に低減することが可能となっている。
 このように、従来短寿命であったシール方式をダイアフラムシールに改造したことで、シール寿命が延長された事例は数多くあり、好評を頂いている。

4. おわりに

 軸シールを必要とする回転機器は、今後ますます高度なシール性能が要求され、機器構造も複雑、高精度化する傾向にあると考えられる。
 しかし、構造上、経済上など様々な事情で高精度を保持することが困難な機器も数多く存在している。ダイアフラムシールは、こうした機器に適応したシール方式の一つとして、シール性能を充分発揮できるものであり、さらに広範囲な分野にも提供していきたいと考えている。
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