電気二重層キャパシタ用電極膜

電気二重層キャパシタタイトル画像
日本バルカー工業(株) 研究開発部 研究企画グループ 企画チーム
林 道直
日本バルカー工業(株) 研究開発部 事業部研究グループ
杉谷 徹
日本バルカー工業(株) 研究開発部 事業部研究グループ
浅野 善敬

1.はじめに

 電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor=以下EDLCと略す)は、携帯電話、パソコン等のメモリーの停電バックアップ用電源として使用されている。容量としては、0.1~数100μF程度で形状はコイン型が主であり、数量ベースで年に10~20 %伸びる傾向にある。近年では、電力貯蔵、自動車をターゲットとした1000F以上の大容量EDLCの開発もされており、試験的ではあるが大型バス(ハイブリット)への搭載が発表されるなど、より現実的な開発がされていきている。
 このように注目を浴びているのは、
・化学反応ではなく物理現象利用のため無公害で、理論的には永久に繰り返し使用可能。
・重金属等の有害物質も含まないため環境に優しい。
・環境保全のCO2低減の切り札である燃料電池自動車やハイブリットカーの補助エンジン(電源)として採用検討。
などの理由による。
 性能面では鉛蓄電池バッテリー並の性能に近くなってきているが、普及にはあと数年かかるという見方がある。課題はさらなる容量アップとコストの低減である。EDLCの容量は、使用される活性炭自体の性能やその電解液とのマッチング、また、活性炭性能を妨げることのない電極製作・組立が大きく影響する。コスト面ではEDLC用活性炭が高価なことと、電極(シート状)にする際の成形の難しさの解消が課題となっている。
 活性炭電極の成形性は性能、コスト共に大きく影響を与え、いわばEDLC製造のキーポイントである。今後のEDLCの普及という意味からも、活性炭EDLC電極の性能的、コスト的安定供給に注目が集まっている。
 本報では、耐容量EDLCを視野に入れつつコイン型EDLC用の活性炭電極の量産検討を行い、連続シート状電極の製品化に成功したので紹介する。

2.EDLCの原理と特徴

 EDLCとは何か?簡単に言ってしまえば電気を蓄えるものである。一般に電気を蓄えるものといえば各種の二次電池があるが、それらは物質移動をともなった酸化還元反応により充放電を行う。しかし、これらの二次電池と違いEDLCは電気二重層(たとえば個体電極と電解液のような2つの異なる相が接触する界面において極めて短い距離を隔てて生・負の電荷が対向して配列する状態)という物理現象を利用して蓄電を行っている。簡単な単セル模原理図を図1に示す。
P2-1
 EDLCに電圧を印加すると電気二重層の原理により負極側ではマイナス電子と電解液中のプラスイオンが対向して配列して充電される(正極側ではプラス電子とマイナスイオンが同様に配列する)。逆に放電時は電解液中にイオンが放出され電流が流れる。電解液に存在するイオンの数が多いほど、また電子とイオンが配列する電極の表面積が大きいほど蓄えることのできる電気は多くなる。電極に活性炭が使用されている理由は、より多くのイオンを電極表面に配列させるためである。

 電解液には水素(酸またはアルカリ)と有機系がある。一般に有機系のほうが絵ネル義0密度の高いものができるとされる。有機系電解液は、プロピレンカーボネートにテトラフルオロホウ酸の第四アンモニウム塩を加えたものが一般的に使用される。  EDLCは電気二重層という物理現象により充放電を行うため、化学反応を伴う二次電池とは異なる特徴を持つ。主な特徴は次の通りでありEDLCの利点でもある。

・秒単位の急速充電と大電流での放電が可能である。
・充放電回路が簡単
・充放電サイクルが半永久的である
・重金属類など有害なものを含まない

3.EDLCの構造

 図2はメモリーバックアップ用電源などに使われる小型(コイン型)EDLCの構造である。活性炭電極の片面に集電体(Al箔接着あるいはAl溶射)を設け、セパレータを介して、もう一対の活性炭電極を置く。電解液は活性炭電極とセパレータに染み込ませてある。これをケースに封止してセルとする。(図3)
 その他には中型、大型タイプとしては電極を多数積層した積層タイプや巻回タイプがある。
 有機系電解液を使用する際の注意点としては水分を含まないようにすることが上げられる。水分が存在すると、電解液を分解し性能劣化の原因となる。よって電解液には水分が極力入っていないこと、活性炭電極の真空乾燥やセル組立の際の雰囲気管理は重要である。
P3-1

4.EDLC用活性炭電極と製法について

 EDLCに使用される電極の主原料は活性炭である。一般的な脱臭用のものとは異なり、高純度で粒度のそろった活性炭が使用される。また、細孔径も溶媒和された電解質に適した大きさを多く含んでいる。比表面積としては、用途にもよるが1500~2500m2/g程度のものが一般的である。出発原料としてはフェノール系、ヤシ殻系、石油コークス系などがある。
 活性炭電極EDLCは、その製造方法によって、主に次のA~Dのタイプに分かれる。

A フェノール系の樹脂のクロスを炭化させて作った活 性炭繊維クロス
 長所:連尺シートの製作が可能
 短所:エネルギー密度が低い、コストが高い
B 各種接着剤をバインダーとし粉末活性炭を集電体(Al箔など)上に塗布したもの
 長所:安価に連尺シートの製作が可能
 短所:接着剤が活性炭の細孔をふさぐため容量が低く抑えられる
C フェノール系の樹脂を接着剤として粉末活性炭をプレスし、その後炭化させた活性炭板(主に水系電解液を使用したEDLCに使用されている)
 長所:低抵抗(水系電解液の方が有機系電解液よりも低抵抗なため)
 短所:コストが高い、固いため薄くすると割れやすい
D PTFEをバインダーとして加えて粉末活性炭をシート状にしたもの(有機系電解液を使用したEDLCに使用されている)
 長所:低抵抗でかつ高容量化が可能
 短所:連尺シートの製作が困難

 Dのタイプは成形面の課題を克服すれば高エネルギー密度が得られ、従って、自動車用や蓄電用などへの大型EDLCの検討では、このタイプが現時点では最も有望視されている。
P3-3
P3-2
 ここで紹介する本製品は、Dタイプに属する。主成分として粉末活性炭、バインダーとしてPTFEを使用する。尚PTFEは絶縁体のため、電気伝導度を持たせるためにカーボンを加えている。組成比としては次のようなものが一般的である。

活性炭:カーボン:PTFE = 8:1:1(重量比)

PTFEはせん断力を加えるとフィブリル化することが知られている。このミクロなPTFE繊維が活性炭とカーボンをからめて、電極として機械的強度を持たせるのである。これをロール圧延して長尺シート状に成形する。
 高容量の活性炭電極を製作するためには、バインダーとしてのPTFEを極限まで減らせば内部抵抗が低下し、かつ電外液の含侵性も良い方向へと向かう。一方、このことはまた、粉末状の活性炭とカーボンとの混練物をいかにシート状にして、なおかつ取り扱い可能な強度を得るということが非常に困難となることを意味している。またPTFE自体の特徴として、繊維化が進みすぎるとPTFE同士が固まってしまう性質があり、造粒されたようなボロボロの粒状態となる。一旦このような状態となると粒同士は再結合することは無く、シート状への成型が不可能となる。一方繊維化が不十分だと、活性炭、カーボンとの絡み合わず、強度が出ない。成形の際に適度な強度があって、なおかつ、きれいなシート状になるというPTFEの繊維化のバランスが重要である。

5.製品紹介

 今回、適度な強度が得られる混練り法や、連続可能な圧延法などの検討の結果、連続シート状の活性炭電極が完成した。現状製作可能な電極の寸法仕様は次の通りである。(図5)
P4-1

6.活性炭電極の特性

 製作した活性炭電極の充放電特性を二次電池用試験セルに組み込んで測定した。(図6、7、8)

電解液:テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム等の第四アンモニウム塩を電解質としたプロピレンガーボネート溶液(0.5~1.0M)
測定条件:1.0~3.5V

 図8より接線法にて、以下の式にあてはめて静電容量Cを計算する。
 I=C ・ dV/dt
 C=I ・ (t2-t1)/(V1-V2)
P4-2
P4-3
P5-1

7.おわりに

 EDLC用活性炭電極の開発にあたり、当初困難とされていた連尺成形技術を確立し製品化を行いました。一方、EDLCに求められる性能は年々高まり、これに応えるにはさらなる改善が必要と考えています。
 EDLCが二次電池に代わるクリーンな新エネルギーとして普及するかどうかは活性炭電極が十分な性能を持ち、妥当なコストで安定供給できるかどうかにかかっています。また、この技術は各種電池の電極への応用はもちろんのこと、今まで困難とされてきた粉体(例えばセラミック等)の機能を損なうことなく連続シート化が可能なため、各種機能膜の量産化への展開が望めます。例えば、光触媒(酸化チタン)はその光触媒反応によってバインダーとなる有機物を分解してしまうが、PTFEは科学的に安定なためバインダーとなり得ます。この粉体連続製膜技術で光触媒の反応表面積を十分に確保して緻密な連続シートを量産することができます。また、大きな吸着機能を持つ活性炭粒子の表面を覆うことなく緻密な連続シートにすることで高効率な活性炭シートでフィルターを量産することも可能です。
 このように、表面活性な粒子の活性表面積を減少させることなく緻密な連続シートにすることができ、そうした機能膜は、大きな可能性を持っていると考えています。当社が社会的なニーズに応えることができるよう、今後とも開発を行っていきたいと考えています。
 本製品ならびに粉体製膜に関するご相談、試作依頼も承りますので、まずはお問い合わせを!!
<参考文献>
1)小久見善八:新規二次電池材料の最新技術:シーエムシー
2)産業情報調査会:2000年版コンデンサ市場
3)岡村廸夫:電気二重層キャパシタと蓄電システム: 日刊工業新聞社

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