半導体製造装置(ドライプロセスチャンバー)用シール材の使用後シール材の解析によるソリューション提案

P13-1
海外シールマーケティング本部
森岡 利充
研究開発部 シール開発グループ
佐藤 央隆

1. はじめに

 半導体の価格下落は激しく、半導体製造装置に用いられる各種部材に関しても、コストパフォーマンスの向上が求められている。当社で販売している半導体製造装置(ドライプロセスチャンバー/以下省略)用シール材に関しても例外ではない。
 このコストパフォーマンス向上へのソリューションとして、当社では半導体製造装置のシール材使用箇所に対し、単に価格の安いシール材の提供、あるいは性能の高いシール材の提供を行う部分最適ではなく、シール材一式の年間コストの低減に加え、メンテナンスサイクル延長によるメンテナンス費用低減や装置のダウンタイム低減に伴う生産性向上によるチャンバー単位での全体最適の提供を目指している。
 全体最適を提供する手段として、当社にて実践している半導体製造装置用シール材の適材適所な選定による最適化と、それを支えている各シール材使用箇所に求められるシール材のスペックを把握するための使用後シール材の解析について紹介する。

2. 半導体製造装置用シール材の製品ラインアップと適材適所な材質選定

 半導体製造装置用シール材には、耐ラジカル性、純粋性、真空シール性、耐熱性、メンテナンス性、コストパフォーマンス等が求められるが、当社では半導体製造装置用シール材として、高機能ふっ素ゴム、パーフロロエラストマー、更にはゴムと樹脂とのハイブリッドシールと幅広い要求に対応出来る製品ラインアップを揃えている。その製品ラインアップをTable.1に、求められる性能の代表例である耐ラジカル性とコストの位置付けをFig.1に示す。
P13-2
P14-1
 半導体製造装置に使われるシール材は多数有り、シール材使用箇所により使用環境、すなわちシール材に掛かる負荷は異なる。これら様々なシール材使用箇所に対して、シール材への負荷が大きくメンテナンスサイクルに対してボトルネックとなっているシール材は高性能化し、シール材への負荷が小さくメンテナンスサイクルに対してオーバースペックとなっているシール材は性能よりも製品単価を重視し、当社の幅広い製品ラインアップを適材適所に選定することにより、シール材の最適化を図っている。

3. 使用後のシール材の解析

 適材適所な材質選定の実現には、各シール材使用箇所のシール材に掛かる負荷の測定が必要であり、当該シール材使用箇所で使用したシール材のダメージを確認するのが有用と考えている。使用後のシール材の解析について、以下に紹介する。
3-1)解析手法
 ユーザーから使用後シール材を回収した後、外観の状態と使用状況の情報およびユーザーの要望や目的から、必要な解析内容を決定して実施する。解析に使用する主要機器と解析で得られるデータをTable.2に示す。
P14-2
3-2)解析内容
 シール材の使用後状態や解析目的により、必要となる様々な解析を行なうが、主要な解析内容としては次の3点になる。

 (ⅰ) シール材のダメージ解析
 (ⅱ) シール材の寿命に関する解析
 (ⅲ) シール材のシール溝装着やマッチングに関する解析

次に、これらの解析の実例を紹介する。
3-3)解析の実例
3-3-1)シール材のダメージ解析
 実際の解析において取得するデータの例をFig.2に示す。
 Fig.2は、半導体製造装置にて使用されたシール材のエッチングダメージを示している。ダメージとしては軽微であり、シールトップ面へのダメージもないため、継続使用が可能な状態である。
P14-3
3-3-2)シール材の寿命に関する解析
 シール材が安定したシール性能を発揮するには、適切なシール圧の持続的な発生が必要となる。そのために一定の圧縮をさせて使用されるが、その圧縮を元に戻そうとする圧力でシール性能を発揮することになる。しかし、各種使用環境においては、エッチングによる削れ、磨耗、変形といった形状に現れる形態変化や、熱的劣化および経年変化といった様々な要因で、シール面を形状的に維持出来なくなったり、最初の圧縮変形量が永久変形してしまい、シール性能が低下するといった状態がおこる。このとき目的の圧力や真空
P15-1
状態が破れて、重大な事故やトラブルにつながる危険がある。
 シール性能を定量的に計測する指標の一つにCS(圧縮永久歪率)がある。CSが一定値になるまでの予測時間から、CSによるシール材の寿命を測ることができる。Fig.3にCSによるシール材の寿命予測例を示す。
3-3-3)シール材のシール溝装着やマッチングに関する解析
 使用後シール材には、特にシール溝とのマッチングの不適切が原因と考えられる大きなエッチングダメージやネジレ、破断などの不具合が見られる場合がある。
 Fig.4にシール材に発生した破断の例を示す。
P15-2
 これらは、外観上、明らかに原因が特定できるものもあるが、原因の特定が難しい場合は、シール材全域にわたり詳細なミクロ解析や寸法測定などを行ない、現象を推測することになる。また、熱影響などによるシール材の膨張や、動的シール部における転動現象が起因すると考えられる場合は、FEA 解析を行ないシール溝内における挙動やマッチングの良否を検証し、対策案を提案する。
 Fig.5にFEA 解析の例を示す。Fig.5-(a)は、定常温度におけるOリングのシール状態の解析例であるが、Fig.5-(b)は温度条件を想定される最高温度にて解析を実施した例である。内径側にOリングがはみ出す傾向が見られ、この部位でシール材が破断する可能性があり、新たな溝寸法もしくはシール材寸法の設計が対策として考えられる。
P15-3
 以上、解析内容の実例を簡単に紹介した。解析結果をもとにして、半導体製造装置のシール材使用箇所に適材適所なシール材を提案している。次にその選定例について紹介 する。

4. 使用後シール材の解析による適材適所なシール材の選定例

 以下に適材適所な材質選定の具体事例を紹介する。
4-1)現状確認
 あるお客様の半導体製造装置に用いられているシール材はメンテナンスごとに毎回交換を実施している。代表するいくつかのシール材使用箇所において、現状のメンテナンスサイクルで使用したシール材のダメージをTable.3に示す。
 現状のメンテナンスサイクルはシール部位③に使用しているシール材の寿命から設定されており、事実シール部位③での使用後シール材にはラジカルの影響と考えられる大きなエッチングダメージが確認され、これ以上の延命は困難と推測される。シール材使用箇所③が延命出来れば、メンテナンスサイクルの延長が実現出来、その他シール材の長期使用、メンテナンス費用低減、及び装置のダウンタイム低減の効果が期待出来る。
P15-4
4-2)適材適所な材質選定
4-2-1)シール材使用箇所①
 現在の使用製品である高機能ふっ素ゴムで、性能上問題なく、性能向上による延命は求められておらず、シール単価の低減によるコストパフォーマンス向上が求められる。
 現在の使用製品は耐ラジカル性の面で軽微なダメージが確認されるが、耐熱性の面では指標となる圧縮永久歪は特に見られず、熱によるダメージは小さいと考えられる。
 当社製品ラインアップの中で、耐ラジカル性、その他純粋性等は現在の使用製品と同等、耐熱目安温度は現在の使用製品に劣るが、メンテナンスサイクル延長のための必要スペックは満足し、かつ単価低減が期待出来る当社高機能ふっ素ゴム“ARMOR CRYSTAL”を選定した。Fig.6に本部位での適材適所選定のポイントを図示する。
P16-1
4-2-2)シール材使用箇所②
 シール部位①同様に、現在の使用製品である高機能ふっ素ゴムで、性能上問題無く、性能向上による延命は求められておらず、シール単価の低減によるコストパフォーマンス向上が求められる。
 現在の使用製品で、耐ラジカル性、耐熱性等によるダメージは特に見られず、シール部位①に同じく、“ARMORCRYSTAL”が候補となるが、本シール部位は動的部であるため、動的部で使用可能な機械特性も有する高機能ふっ素ゴム“ULTIC ARMOR-F”を選定した。Fig.7に本部位での適材適所選定のポイントを図示する。
P16-2
4-2-3)シール材使用箇所③
 メンテナンスサイクルを決定するボトルネックとなっているシール部位であり、延命には現在の使用製品のダメージ要因と考えられるラジカルに対して、より耐性を有する製品の選定が求められる。当社製品ラインアップの中で、耐ラジカル性の向上に主眼を置き、究極の耐ラジカル性をコンセプトに開発したハイブリッドシール“VICTRA-ER”を選定した。Fig.8に本部位での適材適所選定のポイントを図示する。
P16-3
 適材適所な選定製品にて実機評価を進めており、従来の使用製品と同等のメンテナンスサイクルで問題なくパフォーマンスを発揮している。
 同一のメンテナンスサイクルであっても、年間シールコスト低減に寄与出来る見込みであるが、さらにメンテナンスサイクル延長に向けた延命評価を進めており、順調に推移している。
 メンテナンスサイクル延長の実現により、年間シールコストの更なる低減に加え、メンテナンス費用削減、及び装置のダウンタイム低減に大きく貢献する見込みである。

5. まとめ

 半導体製造装置用シール材に対するソリューションとして、以下を実践し、年間シールコスト削減、メンテナンス費用削減、装置のダウンタイム低減に繋がる一定の成果を得た。

●各シール材使用箇所に求められるシール材のスペックを
 把握するための使用後シール材の解析

●解析結果に基づき、シール材を適材適所に選定することに
 よる装置の最適化

6. おわりに

 当社の適材適所なシール材の選定にご賛同の上、評価頂き、当社の知見向上にも繋がる取り組みにご協力頂いておりますお客様に感謝を申し上げます。
 尚、ユーザー各位の使用シール材、使用方法によっては、本文中で紹介した適材適所な材質選定によるコストパフォーマンス向上が十分に発揮出来ない可能性を含みますが、今後とも、製品ラインアップの拡充と提案力の向上により、社会の発展のために広範囲にソリューションを提供出来るよう邁進する所存であり、ご要望等ございましたら当社までご一報頂ければ幸いです。

ページの先頭へ戻る
ページの先頭へ戻る