地震対策うず巻形ガスケットの検討

P7-1
シールマーケティング開発本部 シール開発グループ
佐藤 広嗣
広島大学 大学院工学研究院 特任教授
澤 俊行

1. はじめに

 1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災では多くの建造物が破壊され、多大な被害が報告されている。各種プラントや港などの配管ラインにおいても漏洩が生じ、火災が発生した例もあった1)。多くのプラントにおいては、地震発生の際に緊急停止装置が作動し、ライン運転が停止することで大きな事故は生じなかったが、ライン運転が停止することで、様々な製品の出荷が止まることがあった。特に、石油化学製品の原料、ガソリン、ガス、電力などは我々の生活に欠かせないものであり、速やかに再稼動を行わなければならないという課題も浮かび上がった。

 プラントなどでは、すでに耐震補強として機器や配管の固定が広く行われつつある。しかしながら、この耐震補強は機器や配管の倒壊防止を目的としたものであり、機器、配管接合面からの漏洩に対するものとはなっていない。従って、地震による漏洩事故への対策が急務となっている。
 本研究では、ガスケット付締結体に対する地震の影響を実際の管フランジ締結体を用いて考察し、地震を受けても漏洩が増加し難いガスケットの検討を行う。

2. 締結体に対する地震の影響の検討

 地震が管フランジ締結体に及ぼす影響として「振動」と「配管曲げ」が想定される。振動については時間が数十秒であることと、熱応力吸収用の配管などで影響は軽微となると考える。それに対し、配管曲げは地盤の沈下や液状化などにより機器やそれを繋ぐ配管が大きく移動することによって、機器・配管接合部に大きな曲げモーメントが作用することがあり、この配管曲げによりフランジの一部が開き、漏洩が生じる事例がある。Figure1は地震により配管に配管曲げが作用し漏洩が発生する模式図を示す。阪神・淡路大震災の際には大事には至らなかったものの地盤の液状化による配管曲げが生じ、LPGの漏洩が発生している2)。地面ごと揺れる地震では機器や配管の移動を防ぐことは困難であり、それに伴う配管曲げは避けられない。
 以上より、地震による管フランジ締結体への影響は配管曲げが大きいと考えられる。従って、管フランジ締結体に配管曲げが作用した際の漏洩防止が地震対策の重要事項となる。地震対策ガスケットについて次項から述べる。
P8-1

3. 地震対策うず巻形ガスケット

 Figure2, 3に耐配管曲げとして開発した地震対策うず巻形ガスケットの写真とコンセプトを示す。内部流体が流出する流路が広がるということすなわち、フランジが開くことにより締結体から漏洩が生じる。このフランジの開きを防ぐためボルト締結時にフランジ面とガスケット内外輪がメタルタッチするまで締め付け、締結体全体の曲げ剛性を増加させることで、フランジ面間が開きにくいようにする考えである。

 標準的なうず巻形ガスケットでは圧縮剛性が高く、メタルタッチには大きなボルト締め付け力が必要となる。地震対策うず巻形ガスケットでは、小さなボルト締め付け力でも圧縮変形を大きくとり、締結体に充分な剛性を与えるため、金属フープ、内外輪の突起・溝の寸法形状に工夫がなされている。加えて、フープ、フィラー形状も工夫してガスケット接触応力50MPa 程度でメタルタッチするよう設計されている。
P8-2

4. 実験方法

 Figure4, 5に配管曲げに対する性能を評価するために用いた装置の概略図と写真を示す。配管曲げを与える試験体は、片方2mずつの配管を有するJPI 600lb 3inch 管フランジ締結体である。8 本すべてのボルトに歪みゲージを貼り付けてあり、ボルト軸力が測定できる。配管曲げは4点へ応力を作用させることで発現する。
P9-2
P9-3
 試験はヘリウムガス内圧5MPaを作用させ、一定時間後の圧力変化から漏洩量を計測する圧力降下法を用いる。圧力降下法から漏洩量を算出する式は以下に示す。

    P8-3


 L:漏洩量[Pa・m3/s]、M:ヘリウムガスのモル質量[mg/mol]、V:配管容器内体積[mm3 ]、R:気体定数[cc·MPa/K·mol]、T:試験温度[℃]、t:測定時間[s]、ρ:ヘリウムガスの密度[mg/mm3 ]、P1:試験初期内圧 [MPa]、P2:一定時間後の内圧[MPa]
 試験ガスケットは、地震対策うず巻形ガスケットと標準的な膨張黒鉛フィラーうず巻形ガスケットNo.6596に加え、シートガスケットNo.6500とNo.GF300も評価した。
 試験手順は以下に示す。配管曲げの前後で漏洩量測定を行い、配管曲げが管フランジ締結体の漏洩に及ぼす影響を評価する。
 ①  平均ガスケット応力50MPaに相当する
   初期締め付け力でボルトを締結
 ②  内圧5MPaを負荷
 ③  実使用時のボルト軸力低下を想定し、
P9-1
   ガスケット面応力が10MPaとなるまでボルトを緩める
 ④  漏洩量を測定
 ⑤  配管曲げを負荷
 ⑥  漏洩量測定

5. 漏洩量測定結果

 Figure6は配管曲げ負荷前後の各ガスケットの漏洩量測定結果を示す。全てのガスケットにおいて、配管曲げを負荷することで漏洩量が増加することが確認された。しかしながら、地震対策うず巻形ガスケットは標準品に比べて漏洩量増加がわずかであり、その優位性が確認できる。
 標準的なうず巻形ガスケットに対する優位性も確認できたが、特にシートガスケットに対する優位性は顕著であった。シートガスケットに換えて地震対策うず巻形ガスケットを用いることも、有効な地震対策になると考える。Figure7に示すように、地震対策うず巻形ガスケットはシートガスケットに比べて必要な締め付け力が小さく、代替は可能である。
P9-4
P9-5

6. おわりに

 地震対策うず巻形ガスケットを含む様々なガスケットを対象に配管曲げを受けた配管を有する管フランジ締結体装置のシール性評価を行い、以下の結論を得た。

・ 配管曲げが作用すると、配管接合部からの漏洩量が増加することが明らかとなった。
・ 地震対策うず巻形ガスケットは配管曲げを受けた場合でも漏洩量増加は軽微であり、優位性が確認された。

 本研究において、フランジ面をガスケット内外輪にメタルタッチさせることで、配管曲げに対する耐性が向上することが確認できた。地震を受けても高いシール性を保持するシール製品を提供することがシールメーカーの責務と考え、このコンセプトのガスケットを2012 年夏に製品化する予定である。

7. 参考文献

1) “ 最新 シーリングテクノロジー -密封 漏れの解明とトラブ ル対策-”
2) 高圧ガス保安協会“, 兵庫県南部地震に伴うLPガス貯蔵設備ガス漏洩調査最終報告書”

ページの先頭へ戻る
ページの先頭へ戻る