FEMによる管フランジのボルト締付けシミュレーション 2

FEMによる管フランジタイトル画像

4.シミュレーション結果


4-1ボルト軸力の変化とばらつき
 各ボルトを図6の順番に従って初期締付け軸力Fi=10.kNで逐次締付けた場合の、締付け完了時のばらつきを図7に示している。比較のために、厚さ3mmの純アルミ材金属平形ガスケットを用いた解析結果20)も同時に示している。また、実験地は2回の実験の平均値としている。横軸は図6に示すボルト番号、縦軸は締付け完了時のボルト軸力Ffを初期締付け軸力Fiで除して無次元化して示している。つまり、値が1に近いほど締結完了時のばらつきが少ないことになる。図から、いずれのガスケットを使用した場合もbolt1~bolt4の軸力が低下し、bolt5~bolt8中の数本のボルトで締付け軸力Fiよりも高い値が確認される。
 使用するガスケットによる違いを見てみると、ばらつきの大きい順にうず巻形ガスケット、石綿ジョイントシートガスケット、金属平形ガスケットを用いた場合となっている。金属平形ガスケットは、他の2つのガスケットより剛性がかなり高いため、軸力のばらつきの最大値は10%程度と低い。うず巻形ガスケットと石綿ジョイントシートガスケットを用いた場合、ばらつきの傾向は比較的似ているが、うず巻形ガスケットの方が各ボルト間の軸力の変化が大きいことがわかる。
P9-2
この原因は、ガスケット座面の寸法の違いにあると考えられる。図8にガスケット座面とフランジ座面の内・外径寸法を示している。石綿ジョイントシートガスケットはフランジの変形が大きくなり、ボルトの軸力が変化しやすくなる21)
P10-1
P10-2
 図9はbolt1の軸力が8本のボルトの締付け過程においてどのように変化しているかを示している。金属平形ガスケットを用いた場合、bolt3とbolt4を締付けたときに少し軸力が増加し、両隣のbolt5とbolt8を締付けた時に軸力が低下していることがわかる。しかしながら、その変化量はわずかである。うず巻形ガスケットと石綿ジョイントシートガスケットを用いた場合、bolt1の軸力の変化は非常に大きくなっている。いずれもbolt1の向かい側にあるbolt2、bolt6、bolt7を締付けた時に軸力が増加している。これは、フランジが”てこ”のように作用し「口開き変形」を生じるためである22)。また、その他のbolt3、bolt4、bolt5、bolt8を締付けた時、bolt1の軸力は低下している。Bolt1の軸力の増加量、低下量ともにうず巻形ガスケットの方が大きくなっている。これは前で説明したガスケット座面の寸法の違いに棋院していると考えられる。
 図7と図9から実験結果は解析結果と比較的よく一致しており、解析手法の妥当性が確認できると言える。しかしながら、実験においては締付けを行う前に全てのボルトをFiの5%、つまり0.5kNで均一に締付けている。これは、各接触面における表面粗さ等の影響を消去するためであり、この作業を省略すると解析結果と実験結果には差が生じてくる。
4-2フランジの変形
 図10は、うず巻形ガスケットを用いた場合のbolt1~bolt4締付け時と締結完了時におけるフランジの変形を50倍に拡大して示している。Bolt1を締付けた時、フランジが”てこ”のように作用して「口開き変形」を生じ、bolt2に反力が生じている。また、bolt2を締付けてもbolt1を締付けた時の変形が残っていることがわかる。同様な変形が、bolt3とbolt4の締付け過程においても見られる。
 締結完了時は、bolt3を締付けた時と似た変形パターンになっていることがわかる。このため、bolt1とbolt3を締付けた時のフランジの大きな「口開き変形」が最後まで影響しているといえる。この現象は、ここで対象としているような口径の小さい剛なフランジで生じやすく。あまり好ましくない変形状態である。そのため、締付け前にある程度の軸力で仮締めする等の対策が必要であると考えられる。
P11-1
4-3ガスケット座面圧分布の変化
 図11は、図10に対応したうず巻形ガスケットを用いた時のガスケットの座面圧分布を示している。ボルトの位置は図6と同じである。図11からわかるように、bolt3の締付け以降は締結完了時まで面圧分布の傾向があまり変化していないことがわかる。これは図10で示したフランジの変形と同様の傾向である。
P11-2
 図12は、ガスケット座面の外縁部つまり図8では、うず巻形ガスケットの場合79mm、石綿ジョイントシートガスケットの場合105mmの径を有する部分の円周方向の面圧分布変化を示している。うず巻形ガスケットの場合は、図11の最も外側の面圧値をグラフとして示したものである。
 石綿ジョシントシートガスケットの場合、bolt1を締付けた時、向かい側のbolt2の部分は面圧値が零となっており、bolt1の部分では比較的高い値を示していることがわかる。この状態からbolt2を締付けると、bolt1付近の面圧は低下し円周方向分布が比較的一様に近づいていることがわかる。
 一方、うず巻形ガスケットの場合bolt2を締付けた時、面圧は全体的に上昇しており、使用するガスケットによる変化の違いが確認される。またいずれのガスケットの場合も、締結完了時の面圧は円周方向に大きく変化しており、その傾向はうず巻形ガスケットの方が大きくなっている。
P12-1
4-4 3回の締付け作業
 ここまでは、各ボルトを1回だけ締付ける、つまり1stepで締付けを完了させる場合について検討をおこなってきた。しかしながら、実際のボルト締付け作業では、各ボルトを数回ずつ締付けることにより作業を完了するのが一般的である。ここでは、初期軸力Fi=10.kNで3回の締付け作業を行い、その時のボルト軸力のばらつきについて検討を行う。
 図13は、うず巻形ガスケットを用いた場合の各step完了時のボルト軸力のばらつきを示している。step1のばらつきは図7と同じである。3回の締付け作業を行っているにも関わらず、step3における軸力のばらつきの最大値は60%程度となっている。このため、均一な軸力状態を得るためには、より多くの締付け作業が必要であることがわかる。
 また、実験結果は解析結果と比較的よく一致しており、ここで採用した解析手法が任意の回数の締付け作業に適用可能であることが確認できる。
P12-2

5.おわりに

 管フランジ継手のボルト締付け過程を評価することのできる有限要素解析手法について説明を行った。そしてこの手法を、ガスケットとして強い非線形特性を示すうず巻形ガスケットと石綿ジョイントシートガスケットを用いた管フランジ締結体に適用し、ボルト軸力のばらつき、フランジの変形、ガスケット座面圧分布を検討した。また、実験結果と比較することにより、 解析手法の妥当性を確認した。
 今後ここで説明した解析手法を用いて、フランジ・ガスケット・ボルトの様々な組み合わせに対して体系的な評価を行うことにより、最適なボルト締付け指針を作成できる可能性が出てきたと言える23)
 しかしながら、まだ解決しなければならない問題点も多く残っている。例えば、うず巻形ガスケットの圧縮特性は寸法によって変化するため、各寸法について材料特性を決定する必要がある。また、実際の締結体のナット座面やガスケット座面等の接触面においては表面粗さ等が存在するため、締付けを開始する前の予備締付けをどの程度にするか検討する必要がある。
 管フランジ継手に関する有限要素解析等によるコンピュータシミュレーションは数多く行われている。しかしながら、それらの結果が実際の設計や施工に十分に反映されているとは言えないようである。今後は、シミュレーションの信頼性を向上させ、体系的な評価を行い、その結果を設計・施工・規格に有効に適用していく必要があると思われる。
 最後に、ガスケットの非線形挙動の同定方法に関して貴重な助言を賜った神戸大学工学部冨田佳宏教授に深甚の謝意を表します。
<参考文献>
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7)西岡邦夫・森田喜保・河嶋寿一、一体形フランジの強度(第2報、ガスケット面圧の解析とボルト本数の影響)、機論、45-392、A (1979)、363-370。
8)Weber, E. M. and Bibel, G. D., Flange Boltup Simulation Using 3-D Finite Element Modeling, ASME PVP Conference, 274, (1994), 63-82.
9)福岡俊道・高木知弘、有限要素解析による管フランジ締結体のボルト締付け過程の評価(うず巻形ガスケットを用いた場合)、機論、66-650、A(2000)、1834-1840。
10)福岡俊道、ボルトの各種締付け方法について(フランジ締結と均一なボルト軸力)、バルカーレビュー、44-8、(2000)、1-9.
11)福岡俊道・高木知弘、トルク法によりボルト締付け過程の力学的
特性について、機論、63-609、A(1997)、1083-1088.
12)Goddard, D. L. and Bibel, G. D., Bolt Preload Variation During Torquing of a Bolted Flange Connection, ASME PVP Conference, 274, (1994), 25-32.
13)池田馨・中川元・光永公一、ボルトの締付けについて、機論、第3部(1970)、1735-1744.
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16)Bouzid, A. and Derenne, M., A Simple Method for Analyzing the Contact Stress in Bolted Flange Joints with Non-Linear Gaskets, ASME PVP Conference, 382,(1999), 103-111.
17)日本バルカー工業(株)、VALQUA HAND BOOK、1996、151、
18)福岡俊道・高木知弘、管フランジ締結体の三次元湧現要素解析(石綿ジョイントシートガスケットを用いた場合)、機論、A(2001)、投稿中。
19)福岡俊道・高木知弘、管フランジの三次元有限要素解析(座面形状の影響について)、機論、64-627、A(1998)、2402-2407.
20)Fukuoka, T. and Takaki, T., Finite Element Simulation of Bolt-Up Process of Pipe Flange Connections, ASME Journal of Pressure Vassel Technology, 123, (2001), 1-6.
21)福岡俊道・高木知弘、三次元有限要素法による管フランジのボルト締付け順序の評価、機論、64-627、A(1998)、2734-2740.
22)福岡俊道、有限要素解析による管フランジのボルト締付け手順の評価と最適化、配管技術、43-4、A(2001)、34-40.
23)高木知弘・福岡俊道、有限要素解析による管フランジ締結体のボルト締付け指針の検討、山梨講演会講演論文集、No.000-4、(2000)、77-78.
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