フランジ締結体の応力緩和特性に与える増締めの影響

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シールマーケティング開発本部 シール開発グループ
高橋 聡美
野々垣 肇
三菱化学株式会社 水島事業所 設備技術部 機械2グループ
森本 吏一

1. はじめに

 ガスケットを漏洩なく使用するためには、ガスケット面圧を長期的に高く保つことが非常に重要である。温度上昇後に行う増締めは、温度変化により低下したガスケット面圧を回復し高く保つために広く用いられている手段である。
 しかしながら、増締めのタイミングについては、明確な決まりはなく、各社様々な基準で運用されていることが多い。例えば、所定温度到達後、速やかに実施する場合、温度到達まで作業者を待機させる必要があり工事費の増加という課題になっていることがある。
   増締めのタイミングがガスケット面圧に及ぼす影響がわかると、面圧を高く保持できる適切な増締めのタイミングが想定でき、工事費の削減や効率的な工事計画が可能になると考えられる。

 本研究では、面圧を高く保持できる増締めのタイミングを示すことを目的に、フランジ締結体の模擬実験を行い 、所定温度到達後、増締めを行うまでの時間を変化させた場合と、昇温中の増締めを想定し、増締め実施温度を変化させた場合についてのガスケットの面圧挙動を評価した。
 非石綿ガスケットの中でも、PTFE系シートガスケットは、石綿ガスケット代替品として広く普及しつつある製品である。そのため試験ガスケットは、当社の充填材入りPTFEガスケットであるブライトハイパー® No.MF300(以下、MF300)とした。

2. 増締めまでの加熱時間の影響

 ここでは、増締めまでの加熱時間の影響を評価した1)。Table1に試験条件をFigure1に試験装置概要図を示す。締結ボルトに貼り付けた歪みゲージによりボルト軸力を測定し、ガスケットの接触面積からガスケット面圧を算出した。このガスケット面圧が25MPaとなるようにJIS B 2251(2008)に従い締付けを行った2)( 以下、ボルト締結は同規格準拠とする)。締付け後、電気炉で200℃まで加熱し、初期締付けから所定の時間経過後に増締めを行った。増締めは、初期締付から3時間(ガスケット温度が200℃に到達する時間)、及び24時間、96時間経過後の3条件で行った。なお、増締めは運転初期の加熱状態での増締めを想定したホットボルティングにて実施した。
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 Figure2に加熱時間を変化させた場合のガスケット面圧挙動を示す。所定温度到達時から増締めまでのタイミングが遅い場合、増締め後のガスケット面圧はより高い値で保持される結果となった。
 各条件とも増締め後、フランジ締結体に温度変化を与えていないため、温度変化が要因となるガスケットやボルトなどの各部材の熱膨張、温度変化によるガスケットの剛性低下は発生しておらず、時間が要因となるガスケットのクリープのみ増締め後のガスケット面圧に影響している。
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 ガスケットはクリープ量が時間とともに増加し、ガスケット厚さが序々に薄くなることで面圧が低下する。増締め時のガスケット厚さを比較した場合、増締めを行うタイミングが遅いと初期締付からのクリープ量が多いため、増締め時のガスケット厚さが薄いと推測される。ガスケット厚さが薄いと、増締め後クリープによるガスケット変形量は小さくなるため、ガスケット面圧の低下は小さくなる。つまり、増締めを行うタイミングが遅いと、増締め時のガスケット厚さが薄いため、増締め後クリープによるガスケット変形量が小さくなり、結果としてガスケット面圧の低下も小さくなったと考えられる。

3. 昇温中の増締めの影響

 増締めは所定温度到達後に実施されることが多いが、大口径などでは所定温度に到達するまでに時間がかかってしまうために、施工に時間がかかることになる。昇温中の増締めでもガスケット面圧が高く保持できれば、温度到達まで待つ必要がないため、施工時間が短縮でき、工事費が削減できると考えられる。
 ここでは昇温中の増締めを想定して、昇温中のフランジ締結体を増締めした場合のガスケット面圧挙動を確認した。試験条件はTable1と同じだが、増締めをする温度を常温、昇温中の100℃、150℃、所定温度の200℃とした。常温での増締めは、常温でのガスケットのクリープが安定すると考えられる24時間経過後に実施した。
 Figure3に昇温中に増締めをした場合のガスケット面圧挙動を示す。所定温度到達後と比較して昇温中の増締めではガスケット面圧の低下が大きく、増締めを行う温度が所定温度に近いほど、ガスケット面圧はより高い値で保持される結果となった。

 Figure4に温度別のガスケット応力とガスケット歪みの関係を模式的に表したものを示す。ガスケットは温度が高くなるほど同じ面圧でも歪み量が大きくなるため、締付後の温度変化が大きい場合、面圧に大きく影響する。よって、所定温度の付近で増締めを行うと、締付後の温度変化が小さいため、締付後の面圧低下も小さくなったと考えられる。
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4. 有効な増締めのタイミング

 2項で述べたように所定温度到達後、増締めのタイミングは遅いほど、ガスケット面圧は高く保持されるため有効であると考えられる。ただし、温度が高い場合、時間の経過とともにガスケット面圧の低下が進むため、ガスケット面圧が漏洩の起きる面圧に達するまでに増締めを行うことが必要である。また、降温によりガスケット面圧は大きく低下するため、増締めは次の降温までに実施することが望ましい。
 
 また、昇温中の増締めについては、3項で述べたように所定温度到達後の増締めと比較してガスケット面圧の低下が大きく、増締め時の温度が高い程、ガスケット面圧が高く保持されることから、長期的に高いガスケット面圧を保持するためには、より高温で増締めを行う方が効果的であると言える。

5. おわりに

 施工効率が良く、かつ面圧を高く保持できる増締めのタイミングを示すことを目的に、フランジ締結体の模擬実験で増締めまでの加熱時間、昇温中の増締めがガスケット面圧挙動に与える影響を評価し、以下の結論を得た。

 ・ 増締めは所定温度到達後、できるだけ遅いタイミングで実施する方が有効である。
 ・ 昇温中の増締めは、できるだけ高温で実施することが望ましい。

 今回、増締めまでの加熱時間や昇温中の増締めがガスケット面圧挙動に及ぼす影響をガスケット締結体の模擬実験によって明らかにすることができた。今後ともユーザーの抱える困難な課題の解決に貢献していく所存である。

6. 参考文献

1) 野々垣 肇、山邊 雅之、森本吏一、バルカー技術誌、No.20、2-7、(2011)
2) JIS B 2251(2008)フランジ継手締付方法

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