内圧作用下での渦巻き型ガスケット付き大口径管フランジ締結体のFEM応力解析と密封性能評価 1

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山梨大学工学部
澤 俊行,尾方 尚文
Toshiyuki SAWA Naofumi OGATA
日本バルカー工業(株)
西田 隆仁, 山中 幸
Takahito NISHIDA,Yuki YAMANAKA

1. 緒言

 ガスケット付き管フランジ締結体の密封性能を評価する上で重要なガスケット接触応力を取り扱った研究(1)~(6)はいくつかなされており,それらの研究の多くは比較的小口径の管フランジ締結体を対象としている。一方,呼び径の大きな管フランジ締結体も石油プラントなどに多用され,しばしば漏洩事故が発生しているようである。最近,ASME内のPVRC(Pressure Vessel Research Council)が,従来のガスケット係数(m,y)と密封設計法(7)(8)に代わる漏洩量に関するタイトネスパラメータTp(9)と新ガスケット係数(Gb,a,Gs)を用いた新しい漏洩評価法と締結体設計法(9)~(13)を公表している。
 著者らは(6)比較的呼び径の小さな渦巻き型ガスケット付き管フランジ締結体(呼び径3インチ,JPI)のガスケット接触応力分布を,ガスケットの応力-ひずみ関係におけるヒステリシスを考慮して軸対称三次元弾性論および有限要素法を用いて明らかにするとともに,実際の管フランジ締結体を用いて漏洩実験を行い,与えられたTpを実現するために必要なボルト初期締付け力の決定方法について検討した。さらにPVRCの締結体設計法に関して,内圧作用時の残留ガスケット応力の推定が不確かであることを指摘し,理論的に内圧作用時残留ガスケット応力を明らかにして、漏洩および新ガスケット係数を評価している。すなわち、従来からの設計法およびPVRCの設計方式における基本的問題点は、管フランジ締結体に内圧などの荷重が作用したときの実際のガスケット接触応力の推定が理論的根拠を持って行われていないことである。
 管フランジ規格(14)では,呼び径の比較的小さな管フランジ寸法と呼び径の比較的大きな管フランジ寸法では、管フランジ寸法、ガスケット接触幅およびガスケット接触面積などが必ずしも比例していない。このため比較的呼び径の大きな管フランジ締結体の密封性能を評価する一因子であるガスケット接触応力,新ガスケット係数などを調べておく必要がある。従来,比較的呼び径の大きな管フランジ締結体の漏洩評価などについて扱った研究はANDOらの研究(15)を除いて見あたらない。
 そこで本研究では,比較的呼び径の大きな管フランジ締結体(呼び径20インチ大口径管フランジ締結体と呼ぶ)に関して,内圧作用時のガスケット接触応力分布をガスケットの非線形性とヒステリシスを考慮して有限要素法を用いて解析し,3インチ管フランジの場合(6)と比較を行い管フランジ呼び径がガスケット接触応力分布に与える影響を明らかにする。さらに内力係数φg(ボルト軸力の増減分と内圧による軸方向荷重との比)を解析し,内力係数を用いて内圧作用時のガスケット残留応力を推定する。実際の20インチ管フランジ締結体を用いてボルト軸力変動(内力係数)および漏洩量測定実験も行い,漏洩量からタイトネスパラメータTpを求め新ガスケット係数(Gb,a,Gs)(9)~(13)を算出し,管フランジ呼び径が新ガスケット係数に与える影響を明らかにすると共にPVRC方式のROTT(9)~(13)(Room Operational Tightness Test)により算出される新ガスケット係数および3インチ管フランジ締結体(6)のそれらと比較検討する。またボルト軸力変動(内力係数φg)に関する実験値と計算値を比較する。最後に与えられた内圧作用時タイトネスパラメータTpに対して,ガスケット接触応力分布を用いる方法とPVRC方式により得られるボルト初期締付け力Ffの値を比較検討し、Tpに対するより正確なボルト初期締め付け力Ffの求め方を検討する。

2解析方法

2.1ガスケット接触応力分布の解析
 図1は一般的にN本のボルト・ナットにより初期締付けカFf締結され,内圧Pが作用するガスケット付き管フランジ締結体を示している。締結体に内圧Pが作用するとき各ボルトには軸力の増減分Ftが発生し,ガスケット接触面からは圧縮力Fc(ボルト1本当たり)が失われ,ボルト1本当たりの平均ガスケット接触応力はFf/Aから(Ff-Fc)/Aへ変化する。ただしAはボルト1本当たりのガスケット接触面積を表す。なお軸方向外荷重をW'とするとき,ボルト1本当たりのボルト軸力の増減分FtとW'の比は内力係数φgと呼ばれている(1)~(4)。すなわちφgはφg=Ft/(W'/N)であり,内力係数φgが求められるとガスケット接触面から失われる力FcはFc=(1-φg) W'/Nで与えられる。ただし外荷重W'はW'=πa32P(a3はガスケット内半径)で与えられる。
 本研究では管フランジ呼び径がガスケット接角応力分布におよぼす影響を明らかにするため,比
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較的呼び径の大きいJPI Class300呼び径20インチ管フランジ(フランジ外径775mm,ボルト数N=24,ボルト呼び径M33)と比較的呼び径の小さいJPI Class600呼び径3インチ管フランジ(6)(フランジ外径210mm,ボルト数N=8,ボルト呼び径M20)を用いた管フランジ締結体に関して,有限要素法を用いてガスケットの応力-ひずみ関係における非線形性とヒステリシスを考慮した三次元弾塑性応力解析を行い,主にガスケット接触応力を調べる。
 図2は解析モデルを示し,原点をOとする円筒座標系(r,θ,z)を用いる。管フランジ,ボルトおよびガスケットの縦弾性係数,ポアソン比をそれぞれ(E1,ν1),(E2,ν2)および(E3,ν3)とする。また管フランジのフランジ厚さを2h1,ガスケット厚さおよび内径をそれぞれ2h3および2a3とする。大口径管フランジおよびそれのボルトの縦弾性係数,ポアソン比をそれぞれE1=E2=206GPa,ν12=0.3とし,小口径管フランジ(6)およびそれのボルトの縦弾性係数,ポアソン比をそれぞれE1=E2=193GPa(SUS304),ν12=0.3とする。ガスケットのポアソン比はν3=0.34とし,応力-ひずみ関係については非線形性およびヒステリシスを考慮する。
 図3は大口径管フランジ締結体の1/96の要素分割を示しており,対称性を考慮し1本のボルト周辺を計算対象としている。有限要素コードはMARCを使用し,総要素数及び節点数はそれぞれ8444,10230である。要素には6面体8接点ソリッド要素を使用し,管フランジとガスケットの接触面には接触条件を用いた。
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2.2ガスケットの応力-ひずみ関係
 本研究ではアスベストフィラーを用いた渦巻き型ガスケットを使用し,ガスケットの応力-ひずみ関係の負荷時(初期締付け時)と除荷時(内圧作用時)におけるヒステリシスおよび非線形を考慮している。
 図4はFEM応力解析で用いたアスベスト渦巻き型ガスケットの応力-ひずみ関係を示している。実線は実験で得られた応力-ひずみ曲線,破線は解析で用いた近似直線である。ガスケット負荷時(初期締付け時)の応力-ひずみ関係は断片線形近似して非線形性を与え,それぞれの断片線形直線の傾きを図中に示している。ガスケット除荷時(内圧作用時)における応力-ひずみ近似直線の傾きは5.07GPaとし,負荷時と除荷時それぞれ異なる傾きを用いることによりガスケットの応力-ひずみ関係のヒステリシスを考慮する。
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3. 実験方法

 実際の管フランジ締結体を用いてROTT(9)~(13)に対応する漏洩量測定実験を行い,初期ガスケット接触応力とタイトネスパラメータTpの関係を求める。図5は実験に用いた大口径管フランジと渦巻き型ガスケットの寸法を示している。管フランジはJPI Class300呼び径20インチ,ガスケットはASME/ANSI Classs300呼び径20インチである。なお,ボルトの呼び径はM33で,軸部には180°の位相差で2枚のひずみゲージを貼り付け,予め校正した。管フランジ,ボルトの材質はSFVC2A(JIS),渦巻き型ガスケットはフィラ一部がアスベスト(石綿),外輪はステンレス鋼SUS304(JIS)である。図6は大口径管フランジ締結体の実験装置の概略を示している。ガスケットをはさんだ1対の管フランジをN=24本(小口径管フランジ締結体(3”)はN=8本)のボルトにより所定の初期ガスケット接触応力を得るために初期締付け力Ffで締結する。なおボルト軸力はボルト軸部に貼られた校正済みのひずみゲ一ジにより検出する。内圧はガスボンベ(ヘリウムガス0により作用させ,その時の作動内庄は圧力変換器を用いて電圧に変換し記録する。本実験では実験開始時と終了時における内圧変化量および締結体内部容積(大口径9.8m3,小口径0.583m3)から単位時間当たりの質量漏洩量を換算((内圧変化量)×(容積)/(測定時間))した。大口径管フランジ締結体の内部容積を減らし測定時聞を短縮するために,図6に示されるように円筒を締結体内部に挿入している。また,内圧作用時におけるボルト軸力変動(内力係数φg)もひずみゲージにより測定した。
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4. 有限要素法による解析結果

 図7は大口径管フランジ締結体の周(θ)方向におけるガスケット接触応力分布を示している。縦軸はガスケット接触応力σz,横軸は図2に示すように周方向の角度θ(=0°~7.5°)である。初期締付け力はFf=200kN,内圧はP=5MPaとした。なおガスケットは管フランジとの接触面(フィラー部)のみをモデル化しており,初期締付け時におけるガスケット外周部r=288.9mmの応力分布,内圧作用時におけるガスケット内周部r=262.75mm,中間部r=275.9mmおよび外周部r=288.9mmの周(θ)方向応力分布を示している。周方向の応力分布の差異は極めて小さいことが分かる。このため半径方向のガスケット接角応力分布に関しては図2に示すθ=0°(ボルト中心軸線上)の応力分布を用いる。
 図8は大口径管フランジ締結体の半径(r)方向におけるガスケット接触応力分布を示している。縦
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軸はガスケット応力σz,横軸はガスケット中心からの距離rである。初期締付け力はFf=200kN,内圧はP=3,4および5MPa(圧力-温度基準(16)における許容最大内圧)とした。内圧が作用すると平均ガスケット接触応力は減少することが分かる。特にガスケット内周(r=262.75mm)付近ではガスケット接触応力がゼロ,すなわち管フランジとガスケット接触面が分離することが示されている。また図中のガスケット接触応力σz=19MPaを示す破線は,本実験により得られた新ガスケット係数“Gb”の値である(表2参照)。新ガスケット係数の定義(9)~(12)から新ガスケット係数“Gb”は,タイトネスパラメータTp=1の時のガスケット接触応力である。Tp=1は極めて小さい値であり密封性能は低い。従ってσz=19MPa以下の部分はほとんど密封に寄与していないと仮定した。大口径管フランジ締結体の場合,内圧が作用するとガスケット接触応力の減少だけではなくガスケット有効幅すなわちガスケットの密封に対して有効な接触面積も減少すると言える。
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 図9(a)は大口径管フランジ締結体の内圧作用時(ガスケット除荷時)におけるガスケットの縦弾性係数E3が,ガスケット接触応力分布におよぼす影響を示している。縦軸はガスケット応力σz,横軸はガスケット中心からの距離rである。初期締付け力はFf=200kN,内圧はP=5MPaとした。また,図9(b)はこのとき用いた除荷時におけるガスケットの応力-ひずみ関係における傾き,すなわち縦弾性係数を示しており,④E3=5.07GPa(標準,図4参照)⑤E3=2.54GPa(1/2倍)および⑥E3=10.1GPa(2倍)とした。なお負荷時におけるガスケットの応力-ひずみ関係は一定とし,図4に示す断片線形直線である。図9よりガスケット除荷時(内圧作用時)におけるガスケットの縦弾性係数E3が小さくなると,内圧作用時におけるガスケットの密封に対して有効な接触面積が増加することが分かる。従って除荷時の縦弾性係数E3が小さいガスケットを開発使用することにより密封性能が向上する可能性があると言える。同様に負荷時の応力-ひずみ関係における縦弾性係数E3を変化させて計算を行ったところ,やはり負荷時の縦弾性係数E3の値が小さい方が密封性能が向上することが予想された。
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 図10は初期締付け時における平均ガスケット接触応力をσzm=50MPaとし,内圧P=5MPaを作用させたときの大口径管フランジ締結体と小口径管フランジ締結体のガスケット接触応力分布の比較を示している。なお縦軸はガスケット応力σz,横軸はガスケット中心からの距離rをガスケット内半径a3(=525.5/2mm)で無次元化した値である。大口径管フランジ締結体(実線)のガスケット接触応力分布は小口径管フランジ締結体(破線)と比較して大きく変化していることが示されている。特にガスケット内周(r/a3=1)付近ではガスケット接触応力がゼロとなり,ガスケット接触面が分離している。平面座ガスケットを用いた管フランジ締結体は,ガスケットがボルト中心円直径よりも内周側に位置するため,ボルト初期締付け力Ffによりフランジ部には曲げモーメントが発生しフランジが曲
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がる(傾く)。この現象は一般にフランジローテーションと呼ばれている。大口径管フランジ締結体のガスケット接触応力分布がガスケット内周から外周に向かつて大きく傾く原因は,フランジローテーションの発生量が大きいためと考えられる。これに対し小口径管フランジ締結体に関しては,フランジローテーションがほとんど発生していないことが分かる。また初期締付け時における平均ガスケット接触応力は大口径管フランジ締結体,小口径管フランジ締結体共にσzm=50MPaであるが,内圧(P=5MPa)が作用したときの平均ガスケット接触応力は大口径管フランジ締結体の方が小さい。この原因は大口径管フランジ締結体の方が小口径管フランジ締結体と比べて単位ガスケット接触面積当たりの内圧による軸方向引張り荷重W'が大きいこと(大口径管フランジ締結体:W/A'=23.9MPa,小口径管フランジ締結体:W'/A'12.2MPa,ただしA'は全ガスケット接触面積),および両者の内力係数φgの値の差異によるものと考えられる(6)

5.解析結果と実験結果の比較

5.1内力係数
 図11は管フランジ締結体のボルト締付け状態を示している。トルクレンチを用いてボルトに貼られたひずみゲージの出力を見ながら,各ボルト軸力が所定の軸力となるように締付け作業を行った。
 図12は本実験に用いた大口径管フランジ締結体のボルト軸力変動(内力係数φg)(1)~(6)を示している。縦軸はボルト軸力Ff+Ft,横軸は内圧Pである。実線は解析結果,破線は実験結果を示している。なお,Ff=200kNである。内圧Pの作用に対してボルト軸力の増減分Ftはほぼ線形的に減少している。除荷時と負荷時では若干ヒステリシス(矢印)を生じているがPとFtの関係はほぼ線形であり,この関係から内力係数φgはφg=Ft/(W'/N)で求められる。なおW'=πa32Pであり,Nはボルト本数である。大口径管フランジ締結体の内力係数φgの値は解析結果よりφg=-0.226,実験結果よりφg=-0.229となり,解析結果と実験結果はかなり良く一致している。また内圧が作用するとボルト軸力は減少することが分かる。これは前節で述べたフランジローテーションの影響と考えられる。また小口径管フランジ締結体のφg(1)~(6)は解析結果よりφg=0.161,実験結果よりφg=0.165である。いずれも本解析結果と実験結果はかなりよく一致している。ガスケット接触面から失われる圧縮力Fcはボルト1本当たりFc=(1-φg) W'/Nで表され,内力係数が小さくなるとガスケット接触面から失われる圧縮力は大きくなる。大口径管フラ
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ンジ締結体の内力係数φgは負であり,内圧によるガスケット接触応力の減少が大きくなるため初期締付け力の設定の際には注意が必要である。逆に言えば小口径管フランジ締結体と同じ設計基準を用いて本論文で扱っている大口径管フランジ締結体のボルト初期締付け力を設定した場合,内力係数φgが負であることと単位ガスケット面積当たりの内圧による軸方向荷重W'が大きいことにより内圧作用時のガスケット接触応力が不足する可能性がある。

〈参考文献〉
(1) 澤・熊野・小林・伊藤,機論.49-445.1149. (1983)
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