圧延成形による充填材入り  ふっ素樹脂シートガスケット バルカロン®シリーズとNo.GF300シリーズ

圧延成形による充填材入り- ふっ素樹脂シートガスケット-バルカロン®シリーズとNo
シール営業本部
 小池 真二

1. はじめに

 日本を始め欧米各国では、石綿規制に伴い、石綿ジョイントシート(以下CAFと記載)に代替することを目的として、多数の非石綿ジョイントシートが開発された。しかし、こうして開発された非石綿ジョイントシートは、CAFに比べてその繊維分は極めて少なく、高温でゴムバインダーが硬化すると脆くなり、増締めによってガスケットの割れる事例が多発するようになった。こうした状況は、今日に至っても完全には解消されていない1)。
 そのため、非石綿化の過程では、CAFに代えてうず巻形ガスケットが使用されることが多くなったが、シートガスケットの利便性は捨てがたく、ふっ素樹脂系シートガスケットがCAF代替として選択される場合も増えていった。
 ふっ素樹脂系シートガスケットは、耐薬品性に優れるため、石綿規制以前から、多くの種類のものが石油化学や化学プラントなどに使用されていたが、ふっ素樹脂はクリープ緩和し易いため、CAFに完全代替するには、その汎用性には大きな課題があった。
 こうした課題を解決し、汎用性を高めてCAFに完全代替できるシートガスケットとして開発されたのが、バルカーブラックハイパー®No.GF300(以下GF300と記載)である。このGF300及びその系統のシートガスケットは、今日にあっては、CAF代替シートとして、広くその有効性を認識されてきた。
 しかし、ふっ素樹脂系シートは製法も多岐にわたり、クリープ緩和特性を改良した充填材入りふっ素樹脂シートも単一の製品群ではない。そのため、選定の過程では時として混乱を生じ、場合によってはシール故障につながる場合もある。
 本報にあっては、こうしたふっ素樹脂系シートに含まれる各製品群の製法及び機能的特長を明瞭にし、各製品群の選定、使用のための指針を提示したい。

2. ふっ素樹脂系シートガスケット

 ふっ素樹脂は、1938年Du Pont社のPlunketによって偶然発明された。耐薬品性に優れることから、1946年までは、原子爆弾製造の為のU235工場に使われ、他の用途への使用は厳しく制約された。しかし、その後はストレプトマイシン製造などの医薬ラインに使われ、打抜きガスケットやふっ素樹脂被覆ガスケットの外被、うず巻形ガスケットのフィラーなどのシール部材としても使われようになった。
 ふっ素樹脂が耐薬品性に優れることは、シール材として大きな特質ではあったが、クリープ緩和の大きいことは多年の課題であった。特にシートガスケットは素材特性がそのままガスケット特性となる。このため、ふっ素樹脂系シートガスケットにあっては、多くの製法及び配合が検討され、その過程はふっ素樹脂のクリープ緩和特性改良の歴史とも言える。
 Table.1に、各種ふっ素樹脂系シートガスケットの分類を示し、以下、各製品群について概説する。
p19.2
2-1)圧縮成形によるふっ素樹脂系シートガスケット
 四ふっ化エチレン樹脂(以下PTFEと記載)を圧縮成形した後、スカイビングによってシート状に加工し、ガスケット形状に打抜いたもので、成分別に以下のように分類できる。
 ① No.7010 純PTFEの平型ガスケット
 ② No.7010-EX変成 PTFEの平型ガスケット
 ③ No.7010-2N0など PTFEに無機充填材を配合した平型ガスケット
 純PTFEガスケットは耐薬品性や純粋性に優れることから、腐食性流体や汚染を嫌うプロセスラインに使用される。ただし、クリープ緩和特性に劣る。このため純PTFEガスケットは、クリープを抑制するために溝形フランジで使用することが望ましい。変成PTFEや充填材入りPTFEは、純PTFEに比べクリープ緩和特性は改善されているが、汎用シートガスケットとしての使用には耐えない。
2-2)延伸成形によるふっ素樹脂系シートガスケット
 純PTFEソフトシートは、シート状のPTFE予備成形体を二軸延伸して、薄層化したものを積層してシート状に加工される。延伸によってPTFEは繊維化されるとともに内部に空隙持った柔軟なシートが形成される。ガスケット形状に打抜いたソフトシートガスケットNo.7GP66は、PTFE平形ガスケットより柔軟で高強度である。
 高い柔軟性があるため、大径のグラスライニングフランジのように、座面にうねりのある場合に使用されることが多い。ただし気密性および取扱い性に課題があるため、汎用シートガスケットとして使用するには問題がある。
2-3)圧延成形による充填材入りふっ素樹脂シートガスケット
 PTFEのクリープ緩和特性を改善するには、その流動性を抑制するために充填材の大量配合が必要である。しかし、圧縮成形における充填材配合量には限界があった。
 一方、圧延成形は、予備成形体を作る段階で充填材を配合するため、無機充填材の配合量を格段に高めることが出来、更に圧延によってPTFEが繊維化され、クリープ緩和特性は大きく改善された。
 石綿規制以前は、バルカロン®No.7020に代表されるように、耐薬品性を第一義的特性としたシートがプロセスライン等で多用された。また、ガイロンブルー(ガイロンNo.3504)のように、内部空隙率を高め圧縮率を大きくしたシートが、グラスライニングフランジのような座面のうねりが大きいフランジでその有用性を認められた。
 しかし、これらシートの用途は明確ではあったが、CAFのような汎用性を意図したものではなく、石綿規制におけるCAF代替として考えた場合、これらのシートのクリープ緩和特性はいまだ不十分であった。そのため、CAFと同等の汎用性、機能性を持ったシートとして開発されたものがGF300である。GF300は高温時のクリープ緩和特性を汎用に耐える水準にまで向上させるために、PTFEの配合量を極限まで低減する技術によって開発された。これにより、GFシリーズは高温下でもクリープ緩和特性が大幅に改善され、CAF同等の汎用性を実現することが出来た。

 すなわち、圧延成形による充填材入りふっ素樹脂シートガスケットには、次のような、それぞれ固有の機能を持った三つの製品群が含まれている。

 ① 耐薬品性を特徴とした充填材入りふっ素樹脂シートガスケット
 ② 高いクリープ緩和特性で汎用性を特徴とした充填材入りふっ素樹脂シートガスケット
 ③ 高圧縮を特徴とした充填材入りふっ素樹脂シートガスケット


 これらは、その製法だけで一くくりに出来るものではなく、これら製品群については、その機能面からの理解が必要であり、中でも重要な①耐薬品性を特徴としたシート及び、②高いクリープ緩和特性で汎用性を特徴としたシートについて、次章においてその特性を詳説する。
 

3. 圧延成形による充填材入りふっ素樹脂シートガスケットの特徴

 圧延成形による充填材入りふっ素樹脂シートガスケットとしては、従来から実績のある耐薬品性を特徴とするNo.7020やNo.7026のバルカロン®シリーズと、CAF代替として開発され、高いクリープ緩和特性で汎用性を特徴とするGF300シリーズがある。以下、それぞれの機能的特長を明確にし、選定及び使用のための指針を示す。

3-1)耐薬品性を特徴とする充填材入りふっ素樹脂シートガスケット
 圧延成形した充填材入りふっ素樹脂シートガスケットは、充填材の種類を選ぶことで純PTFEと同等の耐薬品性を付与することが出来る。
石綿規制以前から使用されているバルカロン®シリーズがその代表で、耐薬品性の求められるプロセスラインにおいて多数の実績を有している。本製品群には、次の二品番がある。

 ① No.7020 酸性流体に耐性
 ② No.7026 アルカリ性流体に耐性

 各種薬液に対するそれらの重量減少率をTable.2に示す。充填材入りふっ素樹脂シートガスケットの耐薬品性は、充填材の耐薬品性に依存する。No.7020は充填材にクレーを使用し、酸性流体に高い耐薬品性を示し、非常に多くの実績を持つ。ただし、クレーは強アルカリに対する耐性が乏しく、加熱した水酸化ナトリウム水溶液への浸漬では重量減少が大きい。No.7026は充填材にカーボンを使用 しており、アルカリ性流体に高い耐薬品性を示す。このため加熱した水酸化ナトリウム水溶液への浸漬でも重量減少率は極めて低い。
p21.3
 流体別の選定指針をTable.3に、酸・アルカリ性流体への適用範囲をTable.4に示す。バルカロン®シリーズのように、耐薬品性を特徴とする圧延成形による充填材入りふっ素樹脂シートガスケットは、200℃までの高濃度酸性流体や高濃度アルカリ性流体に適用することができ、耐薬品性の観点においてはGF300シリーズより優れている。
p21.3-2
3-2) 高いクリープ緩和特性で汎用性を特徴とした充填材入りふっ素樹脂シートガスケット

 高いクリープ緩和特性で汎用性を特徴とした圧延成形による充填材入りふっ素樹脂シートガスケットは、GFシリーズに代表される。GFシリーズは、PTFEの配合量を極限まで下げることで、耐薬品性を特徴 としたバルカロン®シリーズよりもクリープ緩和特性を格段に向上させ、高温下でのフローも大幅に改善したことで、広い汎用性を有している。また、この製品群はCAFの完全代替を目的としたもので、PTFEの配合量を低減させても、CAFと同等の耐薬品性を保持している。

高いクリープ緩和特性で汎用性を特徴とした圧延成形による充填材入りふっ素樹脂シートガスケットには、次の三品番がある。

 ① ブラックハイパー®No.GF300(以下GF300と記載)
 ② ホワイトハイパー®No.SF300 GF300と同等の性能で白色
 ③ ブライトハイパー®No.MF300(以下MF300と記載)  GF300の長期信頼性をそのままに、白色でかつ耐薬品性を向上し適用流体範囲を広げた新製品

 これらのクリープ緩和特性を応力緩和率で評価した結果をTable.5に示す。圧延成形の充填材入りふっ素樹脂シートガスケットは、純PTFE系シートに比べ、クリープ緩和特性に優れ、GFシリーズは充填材入りふっ素樹脂シートガスケットの中でも極めてクリープ緩和特性に優れていることがわかる2)3)。
p21.3-2.Table.5
 GFシリーズは、CAF同等の耐薬品性の維持を前提としたもので、バルカロン®シリーズの耐薬品性には達しないが、Table.2からわかるように、GF300及びMF300は酸性流体に対する変化は微少である。また、MF300はアルカリ性流体に対しても重量減少が少なく、GF300よりも耐アルカリ性に優れている。Table.3に流体別選定指針を示す。また、Table.4には、GF300及びMF300の酸性・アルカリ性流体での適用可能範囲の詳細を示す。
 更に、新製品であるMF300は、GF300やNo.7020が使用できない高温・高濃度アルカリや、GF300やNo.7026が使用できない酸化性酸に対しても、使用することができる。すなわち新製品であるMF300は、特定流体に対してはバルカロン®シリーズの耐薬品性に譲るところはあるものの、流体適用範囲の広さはCAFをも上回り、耐薬品性の観点においても広い汎用性を有している。
 具体的には、アルカリ性流体の場合、MF300はpH14以下であれば260℃まで、pH14を越える場合も100℃まで使用可能である。一方、GF300はpH11以下では260℃まで、pH14以下では100℃までに制限される。なお、更に条件が厳しいpH14を超え、100℃を超える場合には、高濃度アルカリ用であるNo.7026が最も適している。
 酸性流体では、GF300、MF300ともpH0以上であれば260℃まで、pH0未満であれば、100℃まで使用可能である。なお、更に条件が厳しいpH0未満、100℃を超える場合には、高濃度酸用としてNo.7020が最も適している。

4. 有限要素解析を用いた長期信頼性評価

 石綿ガスケットは、長期にわたる使用実績があり、それが製品の信頼性の指標となっていた。しかし、石綿規制の時期に開発された新製品にはそうした実績はない。そのため、こうしたガスケットの長期信頼性を予測するために、バルカーはガスケット材料特性を考慮したボルト締結体の長期的なガスケット面圧挙動を、有限要素解析(FEA)を用いて評価している4)5)6)。
 ここでは、フランジ締結体におけるGF300とMF300の長期的なガスケット応力経時変化の予測
p22.4
事例を示す。締結体は、JIS 10K600A 平面座 管フランジ締結体を想定したものである。初期締付面圧は35MPa、内圧は1.0MPa、ガスケット厚さは1.5mmである。運転サイクル条件は、1年毎に内圧と温度を下げて運転を停止し、1日後に再運転するという状況を想定した。
 Fig.1に有限要素解析から得られたガスケット面圧挙動を示す。比較として、他社白色PTFEガスケットの解析結果を併記した。熱サイクルが負荷された場合、運転停止時にガスケット面圧が大きく低下することは一般的によく知られている。しかし、GF300及びMF300は、熱サイクル時にガスケット面圧低下は見られるが、定常高温下では高いガスケット面圧を維持している。このことはシール性能を維持する上で重要な要素であり、長期的な密封信頼性の基本となるものである。
 こうした解析の裏づけにより、GF300シリーズは、優れたクリープ緩和特性による長期の信頼性と、PTFEの高温安定性が高い評価を得て、CAF代替のシートガスケットとして多くのユーザーに好評を頂いている。

5. おわりに

 ふっ素樹脂系シートガスケットには多数の製品群が含まれており、その製法と機能を明確に分類し体系化することを試みた。 特に、圧延成形による充填材入りふっ素樹脂シートガスケットには、耐薬品性に特化してCAFと住み分けたバルカロン®シリーズと、クリープ緩和特性を向上させ、CAFの全面代替を可能にした汎用性の高いGFシリーズの、二つの製品群があるため、本報にあっては、それらの機能的特徴及び適用流体を明瞭にするよう心掛けた。
 今後、シートガスケットを選定する上での一つの指針にして頂ければ幸いである。

6. 参考文献

1) ノンアス切替推進プロジェクト;“シール製品の本格的ノンアス化について”、 バルカーテクノロジーニュース、No.12(2007)P2-11
2) 小池真二;“広範囲の流体に適用できる白色ふっ素樹脂系ガスケット ブライトハイパーTMNo.MF300”、バルカーテクノロジーニュース、No.20(2011)P12-15
3) 出口聡美;“広範囲の流体に適用可能な白色ふっ素樹脂系シートガスケット ブライトハイパーTMNo.MF300”、プラントエンジニア、Vol.43,No.6( 2011/6) P24-29
4) 佐藤広嗣、西田隆仁;“有限要素解析を用いた締結体シール特性の長期予測”、圧力技術Vol.48,No.3(2010)P132-139
5) 佐藤広嗣、黒河真也、山邊雅之、高木知弘;“ソフトガスケットを用いた単一ボルト締結体の高温長期軸力緩和挙動 の評価”、日本機械学会論文集 C 編、Vol.76,No.769(2010/9)P2219-2224
6) 佐藤広嗣;“有限要素解析を用いた締結体シール特性の長期予測”、配管技術、 Vol.52,No.5(2010/4)P19-24

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