ふっ素樹脂フィルムとその高機能化 1

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1. フィルム製品の現状と展望

 当社は「機能性フィルム製品」を樹脂事業における主要製品の一つとして注力している。
 近年、「極薄膜化」「コンパウンド」「ピンホールレス化」「環境に優しい表面処理」「異材との積層・複合化」「多孔質膜」など、新製法・新技術をもって多種多様なラインアップを取りそろえ、更なる市場開拓への足場を固めつつある。
 特に注目していることは、電子通信部品やモーター部品などの「精密機器市場」、軽量化・電装化・環境対策及び安全快適性を目指す「自動車・航空機市場」、また一層の安全性を求められる「食品・医療市場」などへの展開である。
 これらの高機能化技術を複合化、カスタマイズ化させ、個々の顧客へきめ細かく迅速に供給することにより、顧客の期待を超えるお役立ち、すなわち企業理念である「THEVALQUA WAY」の顧客感動に向けて尽力してまいる所存である。

2. フィルム技術

2-1) 薄膜化 (切削・押出・延伸・電界紡糸・キャスト・圧延・ファブリック)
 一般的に熱可塑性樹脂は、インフレーション法や、Tダイ法などで薄膜化される。
 インフレーション法は、固体状の樹脂を加熱して溶融状態にした樹脂原料を円筒状に押出し、その内部に空気を吹き込んで膨張させると同時に外部から冷却固化して薄膜化する。
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 一方、Tダイ法は溶融状態の樹脂を平滑な薄膜状に押出した後、水槽または冷却ドラムによって冷却固化して薄膜化する方法である。その他、カレンダー法、流延法などにより薄膜化される。
 製膜後、更に、樹脂を融点以下の適当な温度で延伸し、分子や結晶に配向を持たせることで、機械的特性の向上や、ガス透過性の改善などの特性を付与させることもある。
2-1-1)切削フィルム
 ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)は、融点327℃以上で、380℃においても溶融粘度は一般的な熱可塑性樹脂に比べ極めて高い。よって一般的な製法で薄膜化は困難なため、下記の方法で製膜される。

 1)PTFE 粉末を円筒形の金型に充填する。
 2)室温下で圧力を加えて予備成形物を製作する。
 3) 金型から予備成形物を取り出し、融点以上で焼成し、冷却する。(フリーベイキング法)
 4)円筒状の成形物に回転軸を差し込む。
 5) 成形物を回転させながら外側から切削加工する。

 切削フィルムは、電気材料、離型材、絶縁被覆、ヒートシール、搬送、摺動、各種パッキン材料などに用いられる。
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2-1-2)強化フィルム
 前項に記載の通り、PTFEのフィルムは一般的には円筒状のブロックからの切削加工により得られる。しかし、ボイドの点在により耐電圧の低い点が存在する。電気特性の優れたフィルムを製膜するには、切削フィルムを圧延することで欠陥のないフィルムになる。
 同寸法の切削フィルムに比べ、ボイドがなくなり、耐電圧、機械的特性が向上し、見かけ上も透明性の高いフィルムになる。
 ただし、圧延時のロール温度以上に再加熱されると徐々に元の長さに戻る傾向にある。
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2-1-3)未焼成テープ(テープシールTM
 PTFE粉末に比較的粘度の高い潤滑性の優れた押出助剤を加え予備成形物を作製し、押出機のダイスから押出す(ペースト押出法)。助剤が揮散しないように熱ロールで圧延し所定の厚さにし、乾燥によって助剤を取り除いた状態のものが未焼成テープである。未焼成テープは柔らかく、塑性変形するためネジの間隙に食い込んで潤滑とシールの両方の役目を果たすため、配管のつなぎ目などに用いられる。
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 多孔質PTFEは、非粘着性・疎水性・耐熱性・耐薬品性・耐候性・低摩擦・撥水性・低誘電率などの優れた性質を有するPTFEを延伸して作られ、Figure2のような3次元に多孔質化された構造を示す。市場では一般的にe-PTFEとして呼称されるこの多孔質PTFEは、その多孔化技術により密度制御・孔径制御・透過制御を行うことが可能であり、PTFEの特徴を活かしながら様々な特性を持つ多孔質膜を作ることができる。
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 その製造方法としては一般的に乳化重合したPTFEファインパウダーを原材料として用い、ペースト押出しされた成形体を延伸する手法が取られており、延伸温度や延伸倍率を制御することで様々な性質の膜を得ることができる。7)
 この多孔質PTFEの応用用途は多岐にわたり、当社では孔径コントロールを行うことによる分離・ろ過用途で使用できるフィルター製品(Sa-PTFEベントフィルター)、また、密度コントロールを行うことで得られる柔軟なPTFEシートを用いたシール製品(バルフロン®ソフトシート、コードシール®ソフト)などを製品としてラインアップしている。
 Sa-PTFEの用途としてはエアーフィルター、ベントフィルター、フィルターバッグなどが有る。また、シール製品については一般的なガスケットの他、化学薬品タンクの窓シールやその柔軟さを利用したクッション材としても使用される。
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2-1-5)PTFEナノファイバー多孔質膜8)
 ナノファイバーとは、繊維径が1μmを下回る極細繊維を意味し、その繊維の細さゆえ、ミクロン繊維では考えられなかった以下のような特長を有することが知られている。
 ① 空気の抵抗が非常に小さくなる
 ② 比表面積が大きくなる
 ナノファイバーの作製方法としては、様々な方法があるが、近年、エレクトロスピニング法にて工業化がなされている。エレクトロスピニング法の原理をFigure3に示す。
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 紡糸装置は、一般に直流高圧電源、紡糸口及び、アースされたコレクターから構成されている。高電圧が印加された紡糸口からポリマー溶液が一定の速度で押し出され、コレクターに到達する際には、繊維径がナノレベルまで減少することによりナノファイバーが得られる。
 エレクトロスピニング法では一般的に溶媒に高分子を溶解させた紡糸液を用意しそれを紡糸することで得られる。しかし、PTFEは溶媒に溶解させることが困難なため、エレクトロスピニング法を用いて紡糸できない材料のひとつとされていた。
 PTFEナノファイバーは、特殊なエレクトロスピニング法によりPTFEディスパージョンから作られた繊維である。
100%PTFEからなるPTFEナノファイバー多孔質膜の製法技術については、米国ZEUS 社が、世界ではじめて工業化に成功した。当社はZEUS 社との協業体制の下、日本国内における用途開発を進め、その用途に合わせた製品改良を共に進めている。
 Figure4にナノファイバー多孔質膜のSEM画像を示す。PTFEナノファイバーの繊維径は約900nmであり、汎用不織布と比較するとその繊維径の細さがわかる。
 その形態と製法に起因するさまざまな特徴を有する。
① 低圧損で高通気性を実現
 ・ 小繊維径化による抵抗の低減、不織布形態による高通気性
② 高い分級性能
 ・ 繊維径のばらつきが小さく、平均流量径分布幅が小さい
③ 高耐熱
 ・ 260℃まで収縮が小さく連続使用が可能
④ PTFE 100% バインダーレス
⑤ 高い耐薬品性
 ・ 酸、アルカリ、有機溶剤で使用可
⑥ 撥水・撥油性
 ・ 親水化(コーティングタイプ)対応可
 ・ 他の材料(汎用不織布)との複層化にも対応
⑦ 紡糸液にナノ粒子を混合することで複合膜が作成可能
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 Table6にPTFEナノファイバー多孔質膜の物性を示す。測定の結果、ガーレー値が低く、高い通気性が得られることがわかる。
 エレクトロスピニング法で得られたナノファイバーは、安定した繊維径となるため、ポアサイズのばらつきが小さく、フィル ターに使用した場合は高い分級性能が期待できる。
 膜厚は、ナノファイバーの堆積量を増すことで容易に調整が可能である。
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