大きい管フランジは何故漏れやすいか?2

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5.解析結果と実験結果の比較

5.1 内力係数
 写真1は大口径管フランジ締結体のボルト締付け状態を示している。トルクレンチを用いてボルトに貼られたひずみゲージの出力を見ながら、各ボルト軸力が所定の軸力となるように締付け作業を行った。
 図11は本実験に用いた大口径管フランジ締結体のボルト軸力変動(内力係数φg(1)~(6)を示している。縦軸はボルト軸力Ff+Ft、横軸は内圧Pである。実線は解析結果、破線は実験結果を示している。
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 なお、Ff=200kNである。内圧Pの作用に対してボルト軸力の増減分Ftはほぼ線形的に減少している。除荷時と負荷時では若干ヒステリシス(矢印)を生じているがPとFtの関係はほぼ線形であり、この関係から内力係数φgはφg=Ft/(W'/N)で求められる。なおW'=πa32Pであり、Nはボルト本数である。大口径管フランジ締結体の内力係数φgの値は解析結果よりφg=-0.226、実験結果よりφg=-0.299となり、解析結果と実験結果はかなり良く一致している。

 また内圧が作用するとボルト軸力は減少することが分かる。これは前節で述べたフランジローテーションの影響と考えられる。また小口径管フランジ締結体のφg(1)~(6)は解析結果よりφg=0.161、実験結果よりφg=0.165である。いずれも本解析結果と実験結果はかなりよく一致している。

 ガスケット接触面から失われる圧縮力Fcはボルト1本当たりFc=(1-φg)W'/Nで表され、内力係数が小さくなるとガスケット接触面から失われる圧縮力は大きくなる。すなわち軸方向外力WはW=Ft+Fcとなるので、Ftの値が内力係数より小さいと分かれば、Fcの値が相対的に大きくなる。これはガスケット接触応力の減少が大きいことになる。

 大口径管フランジ締結体の内力係数φgの値は負であり、内圧によるガスケット接触応力の減少がさらに大きくなるため初期締付け力の設定の際には注意が必要である。逆に言えば小口径管フランジ締結体と同じ設計基準を用いて本稿で扱っている大口径管フランジ締結体のボルト初期締付け力を設定した場合、内力係数φgの値が負であること、と単位ガスケット面積当たりの内圧による軸方向荷重W'が大きいことにより内圧作用時のガスケット接触応力が不足する可能性がある。
5.2 漏洩量測定実験結果
 図12はPVRC(米国、圧力容器研究委員会)のROTT(室温における漏洩試験)実験結果と比較のために実際の大口径管フランジ締結体を用いて行った漏洩量測定実験結果を示している。縦軸はガスケット応力Sg、横軸はタイトネスパラメータTpである。なおガスケット応力Sgは初期平均ガスケット接触応力とし内圧作用によるガスケット応力の減少は考慮していない。
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 表2は本実験から得られる大口径管フランジ締結体および小口径管フランジ締結体の新ガスケット係数(Gb, a , Gs(6)と、PVRC方式のROTT実験から得られる新ガスケット係数の比較を示している。本実験結果におけるガスケット接触応力は初期平均ガスケット接触応力である。
 表2に示されるように内圧の作用によるガスケット接触応力の減少を考慮しない場合、本実験から得られる新ガスケット係数とPVRCの新ガスケット係数との差異は大きい。すなわちPVRCの新ガスケット係数はほぼ一様なガスケット応力下での漏洩試験であり、実際の管フランジ締結体のように半径方向に応力の分布が発生する場合には、新ガスケット係数をどのように適用するかが大きな問題である。

 表3は解析から得られる内圧作用時の平均ガスケット接触応力を用いて算出した新ガスケット係数を示している。ただし大口径管フランジ締結体に関しては、ガスケット有効接触面積を考慮し、ガスケット接触応力σz=19MPa以上(図8)の平均値を用いた。従ってこれらの係数が実際のガスケット接触応力とタイトネスパラメータTpの関係を表すことになる。またPVRCの値との差異は小さくなることが示されている。
 すなわち実際のフランジ締結体における内圧作用時の実際のガスケット接触応力を用いれば、PVRCによる新ガスケット係数の値と近くなるのは当然であり、実際のガスケット接触応力の使用が望まれる。そのためには再三述べているように、内力係数を設計段階でより正確に推定することである(この点に関しては別の機会に述べたい)。
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 なお、図12に示す実際の管フランジ締結体を用いた場合は、PVRC(8)~(14)のPART Bに対応するGsを求めるための測定は意味を持たない。しかしPVRCのROTTにおける新ガスケット係数Gs(8)~(14)の比較のため実際の管フランジ締結体を用いて、ボルト軸力を減少させて漏洩実験を行っている。
 PVRCのPART Bにおける実験は、実際の締結体の挙動すなわち図1に示す内圧作用時におけるFcの値、つまり内力係数の値が求められないためである。このため経験的な実験手法となっていると推測される。
5.3 ボルト初期締付け力の決定
 表4はある内圧作用時タイトネスパラメータTpを与えた時、本実験および解析結果から得られるボルト初期締付け力FfとPVRC方式の決定方法から得られるボルト初期締付け力Ffを示している。

 表4(a)は内圧作用時タイトネスパラメータがTp=100、表4(b)はTp=500、表4(c)はTp=1000の時のボルト初期締付け力Ffを示している。

 作動内圧はP=5MPa(圧力-温度基準による大口径管フランジ締結体の最大許容内圧)を想定している。図13および図14はそれぞれのボルト初期締付け力Ffの決定方法を示しており、決定方法は以下の通りである。
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①ガスケット接触応力分布を用いた決定方法
 図13(a)は管フランジ締結体のガスケット接触応力と内圧Pの関係を示しており、内圧Pが大きくなると平均ガスケット接触応力がFf/Aから(Ff-Fc)/Aに減少する様子を示している。なおガスケット接触面積AはFEM解析より求める。
 また図13(b)は管フランジ締結体の内圧作用時ガスケット応力Sgとないある作用時タイトネスパラメータTpの関係を示している。大口径および小口径管フランジ締結体それぞれに対して、ある内圧作用時タイトネスパラメータTp(点C、図13(b))を実現するために必要な内圧作用時ガスケット接触応力は本研究の実際の管フランジによる漏洩量測定実験結果(表3)を用いて図13(b)の点Dとなる。またその内圧作用時ガスケット接触応力(点D、図13(b))は、図13(a)における点Fでの内圧作用時ガスケット接触応力(Ff-Fc)/Aと同一である。点F(図13(a))に対しての初期締付け時のガスケット接触応力Ff/Aは点G(図13(a))となる。
 初期締付け時に必要なガスケット接触応力(点G、図13(a))は、有限要素解析により内圧作用時ガスケット接触応力(点F、図13(a))から逆問題として求める。初期締付け力Ffは初期締付け時ガスケット接触応力(点G、図13(a))とガスケット接触面積Aから算出される。
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②PVRC方式の決定方法
 図14はPVRC方式(10)~(14)によるボルト初期締付け力Ffの決定方法を示している。常温において内圧作用時タイトネスパラメータTp(点J、図14)に対して、初期締付け時タイトネスパラメータTpa(点L、図14)はTp(点J、図14)の1.5倍とされている*2。(脚注*2:PVRC内のBFC(bolted flanged connections committee、ボルト締結体委員会)の主力メンバーであり、当初からこの新ガスケット係数作成に係っていた、Jim Payne氏に聞いたところ、設計マージンと言っていた。規格でも耐圧試験は通常の圧力の1.5倍であり、この流れで経験的に1.5倍としたとのことであった。)図13と図12を比較すると、PVRC方式はタイトネスパラメータを変化させてボルト初期締付け力を決定しようとしている。他方筆者らはガスケット接触応力の変化をとらえ、実際のガスケット応力を用いているところが異なっている。
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 なおPART B線上のSm1は内圧作用時ガスケット接触応力(点M、図14)を示している。Sm1は新ガスケット係数(Gb, a, Gs)およびタイトネスパラメータを用いて次式で与えられる(10)~(14)
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 なおTpaは初期締付け時タイトネスパラメータTpa=1.5Tp、Trは初期締付け時タイトネスパラメータと内圧作用時タイトネスパラメータの対数比Tr=log(Tpa)/log(Tp)である。また内圧作用によるガスケット接触面積の減少(内圧のしみ込み)とガスケット接触応力の減少H/Ag(図14)を考慮した内圧作用時ガスケット接触応力Sm2(点M'、図16)は次式で与えられる(室温)。
 なおH(=P・Ai)はしみ込みを考慮した場合の内圧による軸方向引張り荷重(エンドフォース)、Aiは内圧のしみ込みを考慮した内圧作用断面積、Agは初期ガスケット接触面積(しみ込みを考慮しない)である(12)。AiとAgは規格中で推定されたガスケット有効幅を用いて得られる値であり、先に述べた解析によるAの値とは異なる。
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 なおSyaは初期ガスケット接触応力と呼ばれ、ボルトの締付け効率Aeとした場合Sya=Gb(Tpaa/Aeとなり、Ae=1.0(締付け効率100%)の時、Syaは点N(図16)のガスケット応力と同一であり、PART AとPART Bの交点となる。理想的にはSm1とSm2(点Mと点M')は同一となることが望まれる。
 PVRCではSm1とSm2、さらに2P(作動内圧Pの2倍)とガスケット固有の最小ガスケット接触応力SLを加えて計4つの応力値の中で、最も大きい応力値を内圧作用時ガスケット接触応力Sm0とするとしている。ボルト1本当たりのボルト初期締付け力Ffは内圧作用時ガスケット接触応力Sm0と内圧Pによるガスケッ ト接触応力の減少を考慮して次式で表される。なおNはボルト本数である。
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 本研究で用いたうず巻形ガスケットの場合、内圧作用時タイトネスパラメータTpがTp=100、500、1000のいずれの場合もSm2の値がSm1、2PおよびSLの値よりも大きい。
 例えばTp=1000のとき、Sm1の値は小口径および大口径管フランジ締結体のいずれの場合も40.3MPaである。Sm2の値は小口径管フランジ締結体が79.1MPa、大口径管フランジ締結体が66.6MPaである。また2P=10MPa、SL=6.2MPaとなり、Sm2>Sm1>2p>SLとなる。
 したがってSm2の応力値を用いて式(4)からボルト初期締付け力Ffを決定する。さらに念のため初期ガスケット接触応力Sya(締付け効率Ae=1.0)を用いてFfの算出を試みてみる。
P15-1
 表4において①の方法から得られるボルト初期締付け力Ff(ボルト1本)を示している。また表中のPVRCは②の方法(Sm2)から得られるボルト初期締付け力Ffを示しており、括弧中に示す値は初期ガスケット接触応力Syaを用いて計算されるFfである。Sgは①および②の方法から得られる内圧作用時ガスケット接触応力(図13の点Dと点Fおよび図14の点M')、初期締付け応力は①の方法から得られる初期締付け時ガスケット接触応力(図13の点G)を示す。表4より大口径と小口径管フランジ締結体のいずれの場合も、本解析および実験から得られるボルト初期締付け力FfとPVRC方式により得られるボルト初期締付け力Ffの差異は大きく、PVRC方式により得られるFfの方が小さいことが示されている。

 大きな差異が生じる根本的原因は推定された内圧作用時ガスケット接触応力Sgの差異にあると考えられる。PVRC方式により得られる内圧作用時ガスケット接触応力Sg(PVRCではSm0と呼ぶ)は、本実験および解析から得られる値よりも極めて小さい。したがってPVRC方式における式(3)(①の方法における図13(a)に相当)が仮に妥当であったとしても、適切なボルト初期締付け力Ffを得ることは極めて困難である。実際には式(4)が妥当であるとは言えず、実際の管フランジ締結体では内圧によるガスケット接触応力の減少だけではなく、ボルト軸力の増減が発生する。すなわち式(4)の左辺は実際にはFfではなく、厳密には(Ff+Ft)となる。Fの増減分が大きいと誤差は大きくなる。基本的に従来の方法およびPVRCの方法では、図1に示すFt(内力係数)およびFcを求める不静定問題が解かれず、仮定を重ねているため、実験の値と大きい差異が生じることになると考えられる。

 小口径管フランジ締結体と比較して大口径管フランジ締結体の方が、①の方法(本実験および解析)と②の方法(PVRC方式)から得られるボルト初期締付け力Ffの差異が大きく、最大で約55%である。この原因はPVRC方式から得られる内圧作用時ガスケット接触応力Sg(Sg0)の推定値が小さいことと大口径管フランジ締結体(20インチ)の内力係数φgが負となり、内圧作用によるガスケット接触応力の減少量が大きいためと考えられる。しかし式(3)にはこのような点が考慮されていない。以上よりPVRC方式によりボルト初期締付け力Ffを決定した場合、内圧作用時の密封性能が不足する可能性があり注意が必要である。

 また念のため行ったSyaを用いる場合、内圧がP=5Mpa程度までなら小口径管フランジ締結体に関しては、Syaから必要なボルト初期締付け力Ffをかなり精度で決定することができることが示されている。しかし大口径管フランジ締結体に関しては、①の方法(本実験および解析)から得られるボルト初期締付け力FfとSyaから得られるボルト初期締付け力Ffの差異は大きい。大口径管フランジ締結体のボルト初期締付け力を設定する際には以下のことに注意する必要がある。

(1)ガスケット有効接触面積が減少する
(2)単位ガスケット接触面積に対する内圧による軸方向引張り荷重Wが大きい
(3)内力係数φgが小さくなり(負となる場合もある)、内圧によるガスケット接触面から失われる荷重が大きい。

 以上のことをふまえた上で設計する必要があり、基本的には内圧作用時のガスケット残留応力をより正確に推定する必要がある。
 内圧作用時タイトネスパラメータTp=1000とした場合、Sm1におけるタイトネスパラメータTpの値はTp=1000となるべきであるが、実際にはTp=832である。Sm1は式(2)に示すように新ガスケット係数(Gb、a、Gs)を用いて算出されるが、係数“Gs”を実験(ROTT)により得ることは難しく(PART BはTp=1で収束するとされている(10)~(14)が実際には収束しない)、係数“Gs”の妥当性については疑問が残る。またPVRC方式のボルト初期締付け力決定法(8)~(14)における初期締付け時タイトネスパラメータTpが内圧作用時タイトネスパラメータTpaの1.5倍であるという理論的根拠は無い。内圧作用時タイトネスパラメータをTp=1000とした場合m大口径管フランジ締結体に関して初期締付け時タイトネスパラメータTpaを内圧作用時タイトネスパラメータTpの1.5倍ではなく約4倍、小口径管フランジ締結体の場合は約3.2倍としたとき、①の方法から得られるボルト初期締付け力Ffとほぼ一致する。実際のボルト初期締付け力Ffの決定においては、PVRC方式の決定方法は簡易であり適切であるが、内圧作用時ガスケット接触応力の推定値が極めて小さい。

 また応力挙動の異なる2つの管フランジ締結体に関して許容漏洩量からボルト初期締付け力Ffを決定する場合、全く同一のボルト初期締付け力決定方法を使用して正確な許容漏洩量を得ることは困難である。すなわち、内圧作用時のガスケット残留応力をより正確に推定することが重要であり、PVRCの方式ではボルト初期締付け力Ffが危険側となる。すなわちPVRC方式では、ボルト初期締付け力の決定は経験的であり、理論的根拠はない。このため、フランジローテーションを起こす本稿のような大口径フランジ締結体の場合にはボルト初期締付け力が不足する。すなわち漏洩しやすいのである。
 一方、大口径および小口径管フランジ締結体の応力挙動に大きな差異が生じるのは、主に両者の形状(寸法)の差異が原因と考えられる。
 表5は大口径および小口径管フランジ締結体の応力挙動に関して、特に影響を与えると考えられる形状(寸法)の差異を示している。
①はうず巻形ガスケットのフィラ一部面積、
②はボルト有効径を用いて算出したボルト総有効面積(大口径:M33X24、小口径M20X 8)、
③は(ガスケットフィラ一面積/ボルト総有効面積、①/②)、
④はボルト穴中心円直径、
⑤は隣接する2つのボルト穴中心距離{=(ボルト中心円直径× π)/ボルト穴数}、
⑥はフランジ厚さを示す。
P16-1
 大口径管フランジ締結体のボルト1本当たりのガスケット接触面積は小口径管フランジ締結体のそれよりも大きいことが分かる。またボルト穴中心間距離の差異(6.35倍)に対してフランジ厚さの差異は2倍であり、大口径管フランジ締結体のフランジ厚さは小口径管フランジ締結体と比べて相対的に小さい。このように大口径管フランジおよび小口径管フランジ締結体の形状(寸法)に比例関係は成り立たず、両者の応力挙動(特にガスケット接触応力分布)に大きな差異が生じる結果となっている。

6.おわりに

 「大きい管フランジは何故漏洩しやすいか?」に対するシンプルな答えは、フランジローテーションによってガスケット面圧の減少が大きいこと、管フランジの各部の寸法比が小さいフランジと異なるからである。対策はボルト初期締付け力を大きくとる。PVRCなどの寸法に基づくボルト初期締付け力では大きく不足するので、ボルトの強度区分を考え(高強度ボルトの使用、管フランジ規格にはボルトの強度区分がない。)、科学的根拠を持ってより高い初期締付け力の設定が有効と推測される。ガスケットに関して理論的帰着として簡単に言えば、縦弾性係数の小さいおよび厚いガスケットが密封性能向上には有効である。

 本稿では、内圧作用時のガスケット接触応力分布を把握することが管フランジ締結体の漏洩評価には重要であることを指摘し、呼び径20インチと3インチの管フランジ締結体に関して、うず巻形ガスケット(日本バルカー製)の応力-ひずみ関係の負荷時と除荷時におけるヒステリシスと非線形性を考慮した弾塑性有限要素解析により、内圧作用時のガスケット接触応力分布を明らかにした。さらに得られた応力分布を用いて与えられたタイトネスパラメータTpに対するボルト初期締付け力を決定した。

 PVRC方式に関して大口径管フランジ締結体については、初期タイトネスパラメータTpを内圧作用時タイトネスパラメータTpの約4倍、小口径管フランジ締結体については約3.2倍とした時、ガスケット接触応力分布および(4) の結果を用いて得られるボルト初期締付け力Ffとほぼ一致することを指摘した。すなわち、本稿で指摘するように内圧作用時のガスケット残留応力をより正確に推定することにより、より正確な漏洩評価が可能であることを示すと共に、PVRC方式では危険側になる可能性を指摘した。PVRC方式は経験則に基づいているので危険なことが多い。注意を要する。要約すると、従来考えられていたボルト初期締付け力の大きさでは漏洩防止に対して必ずしも安全ではなく、ガスケット性能を考えながら科学的根拠を持ってボルト初期締付け力を大きく取ることである。

 規格管フランジは歴史もあり、実績もあり、正しく使用(?)されているときには漏洩事故など発生しないと考えたいものである。しかし阪神淡路大震災のような予想外の荷重が作用して、漏洩が発生した管フランジ締結体の例が多く見られる。筆者の個人的意見であるが、規格は少なくともかなり昔の技術の蓄積であり、現在の技術成果が入りにくい分野と推測される。このため、規格管フランジの設計法に基づいての設計と施工は、必ずしも安全が保証されているとは言いがたい。規格による管フランジ締結体の設計にあたって、ボルトと管フランジに対するに許容応力がかなり低く設定されているが、締結体の漏洩問題に対しては安全で、ないことが世界的に認識されつつある。さらなる技術の改良が必要であり、特にガスケット技術(GasketingTechnology)とボルト締結技術(Bolting Technology )の高度化と精密化およびそれらの総合化に今後の発展がかかっているように思える。

付録

附1 PVRCによるタイトネスパラメータTpと新ガスケット係数
附1.1 ガスケット特性に関する最近の動向
 従来のガスケット係数(m、y)に対して新ガスケット係数(Gb、a、Gs)の研究が、米国のPVRCの中に設立されたボルト・フランジ締結体委員会(BFC)によりHsu博士を委員長として進められてきた。現在新ガスケット係数(Gb、a、Gs)が(m、y)に代わる係数として、ASMEのBoiler & Pressure VesselコードのAppendixに規格化される状況になっているようである。ここではタイトネスパラメータおよび新ガスケット係数について簡単に述べる。なお詳細は文献(13)を参照されたい。

附1.2 タイトネスパラメータTp
 Tpはガスケット付きボルト締結体のガスケットからの漏洩をいかに表現するかの因子である。ガスケット応力と漏洩との関係が調べられた。内部流体を種々変え、ガスケットも外径150mmのうず巻形ガスケットなどとしたときの単位時間あたりの漏れ質量を測定した。その結果、内圧Pと質量漏洩量Lrmの間に、P=(const)×(Lrm)aの関係があることが分かった。実験的には内部流体の種類により“a”の値はばらつきが大きいが、層流理論からa=0.5としている。さらに内圧P*作用時に、150mmの外径のガスケットからの単位時間あたりの漏洩質量をL*rm(参照漏洩塁、1mg/s/150mm)としたとき、タイトネスパラメータTpを式(1)により定義している。
P17-1
 表1は実用上の目安としてタイトネスクラスTcを与えている。内部流体が水や空気の場合はタイトネスクラスをT1とすることを推奨している。しかし一般的にはタイトネスクラスT3(tight)が使われるようである。

附1.3 PVRCの提案する新ガスケット係数Gb、aおよびGsの定義
 室温でのガスケット漏洩試験(ROTT)から得られた新ガスケット係数“Gb”、“a”および“Gs”について述べる。図15はガスケット漏洩試験(R0TT)で用いた試験装置を示す。二枚のプレートにガスケットを挟み、荷重を加え、漏洩試験を行う。図16はガスケット応力-タイトネスパラメータ線図を示す。縦軸はガスケット応力を、横軸はタイトネスパラメータTpを示す。漏洩実験においては、まずあるガスケット応力に対して、内圧を変化させタイトネスパラメータTpの値を測定する。さらに徐々にガスケット応力を増大させ、そのときのタイトネスパラメータTpの値を測定する。これが図中“PART A”で示されている部分である。一応初期締付け状態に対応していると考えられる。
 次に内圧を一定に保ちガスケット応力を減少させ、そのときのタイトネスパラメータTpの値を測定した時が、“PART B”で示す部分である。これは締結体が内圧作用状態で使用されていると考えられている。Tp=1の時の“PART A”の直線が縦軸と交わる点のガスケット応力が“Gb”の値を表す。このときの“PART A”の直線の傾きがガスケット係数“a”を表す。さらに“PART B”の直線においてガスケット応力を変化させ始める位置(図中Sya)によらずTp=1の点で交わると考え、この点の応力を“Gs”と表している。実際に実験を行うと、なかなか一点で交わらないようである。さらにタイトネスパラメータTpが小さい部分では“Knee”(折れ曲がり)が生じるため、タイトネスパラメータTpの値が大きい部分で使用する必要がある。
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