液体漏洩方法検討と気体漏洩との比較

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研究開発部 シール開発グループ
佐藤 広嗣

1. はじめに

 化学プラントなどでは様々な流体が使用され、その配管継手部には、静的シールとして、ガスケットが使用されている1)。流体は液体と気体に大別されるが、一般に、ガスケットの推奨締め付け面圧は液体の場合の方が小さい。しかしながら、従来のフランジ設計においては流体の区分、及び漏洩量についての考慮は無い。
 こうした状況を受け、漏洩量を考慮したフランジ締結体の設計基準の検討が進められているが、そこでの漏洩は気体に限られてきた2)。2008年に規格化された“JIS B 2490管フランジ用ガスケットの密封特性試験方法”3)もヘリウムガスを用いた気体漏洩量の測定方法を示している。そうした背景には、液体漏洩量は気体漏洩量に比べて小さいと考えられ、液体漏洩に対しての問題意識は希薄で、かつ液体の微小漏洩量を測定する方法がほとんど研究されてこなかったことが原因と考えられる。

 そのため、朝比奈らは圧力容器内の気体体積を圧力降下法で測定することによって微小な液体漏洩量を測定する方法を提案した4)。しかしながら、この方法では測定環境におけるわずかな温度変化からの誤差が大きく、また、配管漏洩による誤差の影響を小さくするには高い配管組みの技術が必要である。
 本研究では、より簡便かつ高精度な液体の微小漏洩測定方法の確立を目指し、既存の液体微小漏洩測定方法である圧力降下法との両法で、気液漏洩量の比較を行うことを目的としている。さらに、それによって現行の気体漏洩を前提としたフランジ設計の妥当性を検証する。ここでの対象ガスケットは、ジョイントシートガスケットV#6500と、無機充填材入りPTFEガスケットV#GF300とし、寸法はJIS 10K 50A(φ61×φ104)t3.0とする。試験流体は、液体は水、気体はヘリウムガスとし、それぞれガスケット面圧が3、5、10MPaでの漏洩量を測定する。

2. 実験方法

 Fig.1に示す装置を用いて液体の微少漏洩の測定を行う。これまでに朝比奈らが検討した方法を圧力降下法、ここで新たに検討する方法を体積測定法と呼ぶ。圧力降下法では 容器内の内圧の変化から漏洩量を導き出す方法であるのに対し、体積測定法では、測定初期と一定圧力を負荷した状態での一定時間経過後の気体体積を測定し、その差から漏洩量を導き出す方法である。1式に体積測定法による漏洩量算出の式を示す。
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 ここで、ΔVl:液体漏洩体積 [mm3]、ΔVg:気体体積変化 [mm3]、Vg1:初期気体体積[mm3]、Vg2:一定時間後の気体体積 [mm3]
 圧力容器内の体積はバルブ②を閉じた状態で任意の内圧Ptを負荷してバルブ①を閉じ、バルブ②を開放した際の噴出する気体の体積Vgtを水上置換法によって測定し、2式を用いてVgを導き出す。
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 ここで、Pa:大気圧(=0.1013)[MPa]、Pt:体積測定試験用の負荷内圧 [MPa]、Vg:圧力容器内の気体体積[mm3]、Vgt:体積測定時に噴出した体積 [mm3]
 Fig.2に示すように、初期に容器内の気体体積Vg1を測定後に、内圧Pを負荷して任意時間後に内圧を除荷して再度気体体積Vg2を測定する。ΔVg(= Vg2 - Vg1)と測定時間の関係から漏洩速度を算出する。
 また、比較対象である気体の漏洩量はスリーブを設けたフランジと石鹸膜流量計を用いて“JIS B 2490管フランジ用ガスケットの密封特性試験方法”2)に準拠した方法で測定を行う。
 液体の漏洩量が微小で測定が困難であるため、ガスケット面圧は比較的小さい3、5、10MPaとしている。
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3. 漏洩量測定結果

 Table.1に液体漏洩に対して体積測定法から得られた値と圧力降下法で得られた値を示す。二つの方法で得られた漏洩量は同等であり、体積測定法の妥当性が確認できる。この体積測定法で測定した液体漏洩量とスリーブ法で測定した気体漏洩量の比較をTable.2に示す。表には実験によって測定した体積漏洩量とその体積漏洩量Lvと密度から算出される質量漏洩量Lmを表記する。また、ジョイントシートガスケットをCFS、無機充填材入りPTFEガスケットをPTFEとする。体積漏洩量Lvについては、気体のほうが大幅に大きい。しかしながら、質量漏洩量Lmについては同等の値となった。
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4. 考察

 圧力降下法に比べ、体積測定法の利点としては、測定時間中に内圧や温度を測定し続ける必要はなく、配管漏洩の影響を受けないことが挙げられる。圧力降下法ではわずかな配管漏洩でも長時間の測定であるために影響が大きくなってしまうため、配管漏洩を無視できるほど小さくするためには熟練した配管組みの技術が必要となる。一方、体積測定法ではわずかな時間でバルブ①、②内の体積を測定するため、配管漏洩の影響をほとんど受けない。そのため、試験装置準備が著しく簡便となる。
 液体の漏洩速度は体積漏洩においては気体に比べて小さいものの、質量漏洩においては同等の値であることがわかった。そのため、体積漏洩を基準に設計した場合は、気液で設計基準を分ける必要があるが、質量漏洩を基準とした設計であれば気液を区別する必要はないと考える。

5. おわりに

 新たに考案した体積測定法によって液体(水)の微少漏洩量を測定して気体漏洩量(ヘリウムガス)のとの比較を行い、以下の結論を得た。

• 簡便に液体の微少漏洩が測定できる体積測定法を提案し、その妥当性も確認した。

• 液体の漏洩量と気体の漏洩量を比較し、体積漏洩においては気体漏洩量のほうが大幅に多かったが、質量漏洩においては同等の値であることを明らかにした。また、この関係はガスケット材料に影響が無いことも確認した。

• 液体ラインのフランジ設計を行う場合、体積漏洩を基準とした場合は気体漏洩を基準とした現行の設計方法は過剰なものではあるが、質量漏洩を基準とした場合は妥当であると考える。

6. 参考文献

1) 似内昭夫、澤俊行;“最新シーリングテクノロジー 密封・漏れの解明とトラブル対策”、2010
2) 辻裕一;“密封性を確保するための新しいフランジ設計法”、高圧ガス、47(12)( 通号 489)、pp987~993
3) JIS B 2490 管フランジ用ガスケットの密封特性試験方法
4) 朝比奈稔、西田隆仁、山中幸;“ジョイントシートガスケットおよびばね入りCリング(トライパック)の室温における気体と液体のシール特性”、圧力技術、Vol.37、pp.22-29

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