溶融樹脂製品の展開・深化

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1. はじめに

 当社の溶融樹脂製品群は、現在、一部の開発品を除き、大半はアライアンスによる調達製品が主体となっております。これは昨今の多品種少量の顧客要求にこたえるため、その投資効率と機敏性を考えて構築した体制であります。
 日本(または海外)の優秀な溶融樹脂専門メーカーとパートナーシップを築き、彼らの得意分野を活かしながら、当社の顧客接点力と金型および設計技術やノウハウ、及び最適な原料選定により顧客の要求にタイムリーかつ最適に応えていくコンセプトであります。
 つまり、自社工場、自社設備を持っていないことを逆にメリットとする発想であり、「顧客に対する最適な製品をタイムリーかつフレキシブルに供給する」という観点から、当社が蓄積してきた「オープンリソース」体制であります。
この製品群は主に3つの製品群に分かれております。
・射出成形製品
・高機能樹脂押出成形品
・PFA 薄肉内面接着性付与チューブ
 「PFA 薄肉内面接着性付与チューブ」は、表面改質方法を環境に優しくコストメリットの出せる「連続ドライエッチング方式」に変更することで、生産性を極限まで高めることができました。その結果、既に一部顧客への採用が始まっておりますが、本製品は他社にない開発品として現時点では自社生産品となっております。

2. 射出成形製品の取り組み

 当社の射出製品は、原料調達、設備導入を含めた生産拠点の再配置を実行し、既存製品群のラインアップ拡大と旧来から扱っている「溶融性ふっ素樹脂」に限定しない「エンジニアリングプラスチック」市場へ新規参入し、お客さまの要求に応じた製品投入を検討・展開しております。
 市場調査・新規案件・既存製品からの横展開・深耕を実施、ニッチなアイテムを選択し、有力で特徴のあるモルダーとの提携に加え、世界トップクラスの技術力をもつ有力企業とのパートナ-シップにより、今までの当社製品の枠にとらわれない、最先端な製品を最適な技術・価格をもって供給してまいります。
2-1)射出成形法の紹介
 射出成形法は、溶融した材料を、金型内へ流し込み、冷却して固め、取り出すことで、金型と同一な形状を有した成形品を成形する方法であります。最大の特徴は、立体的で複雑な形状の成形品を、短いサイクルタイムで大量に生産することが出来、低コストでの供給が可能なことであります。
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2-2)射出成形製品事業のスキーム
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2-3)モールダーの技術の特徴
■当社コア技術 ふっ素樹脂成形、PEEK 樹脂成形の対応 上記樹脂成形+二次加工組み合わせ対応
■他社技術 エンジニアリングプラスチックの成形対応
精密成形技術の対応
特殊成形技術の対応
  従来の射出成形不良を解消する新技術
例   ①サンドイッチ成形
    ②金型急加熱冷却、ウエルドレス成形
    ③発泡成形
    ④射出圧縮成形
    ⑤金属とプラスチックの複合成形技術 他

3. ドライエッチPFA薄肉内面処理チューブ

3-1)溶融押出製品の取り組み
 当社はPFAチューブ内面にケミカルエッチング法の1つである「液体アンモニア法」を用いて表面改質を施した「ロール被覆用PFA 薄肉チューブ」を製造・販売してまいりましたが、2010年、新たに「環境にやさしい表面改質」による「ドライエッチPFA薄肉内面接着性付与チューブ」の販売を開始いたしました。本品は従来品と同様にロール被覆用に用いられておりますが、製造方法・接着特性において優れた特徴を有しております。
3-2)ケミカルエッチング法との違い
3-2-1)環境にやさしい製品
 従来のケミカルエッチング法は「環境負荷の高い」薬液を大量に使用することにより実施されておりましたが、「ドライエッチ」では、希ガスを用いた電気的処理方法による改質のため、環境負荷物質の使用・発生はほとんど皆無であり、環境負荷の小さな製品となっております。
3-2-2)顧客要求に答えるコスト
 従来のケミカルエッチング法では制約により、長く押出したチューブを「短くカット」した上で「薬液を入れた内部表面改質」「内面表面洗浄・乾燥」「袋詰」という複数の工程を経る事が不可避な製品でありました。
 ドライエッチ法を用いる事により複数の工程を経ることなく「連続的に表面改質」を実施、そのまま「巻き取り続ける」事での生産が可能となりました。
 製造からお客さまの手元まで「ロスの無い」「コンパクトな」状態で提供が可能となりました。
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3-2-3)より高い品質の提供
 「ドライエッチ」は安定した表面処理状態の提供が可能です。
 「有機溶媒法」で発生しやすかった「ブロッキング現象」の回避、「液体アンモニア法」で問題となりやすい「処理(色)ムラ」の発生を回避できます。
 また、二つのケミカルエッチングにある「処理効果期限」も本方法はほとんど制約がなく、供給形態(リール巻き)での保管では長期間(現時点では5年間)の保存も可能です。
3-3)製品仕様・チューブ構成
 本製品は「PFA単体」「導電性PFA」の2種、対応可能です。
 連続処理する機構の特徴上、外径・肉厚の組み合わせには制限がございます。ご要望寸法・巻き長さにつきましては別途、お問い合わせ願います。
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3-4)今後の展開
 現在は新製品として折り目にクラックが存在しない「折り目緩和チューブ」の量産生産体制を構築中であります。
 本製品は来期上市を計画しており、現行品用途の「加圧用ローラー被覆用」に加え、「定着用ベルト・ローラー被覆用」としての展開を目指しております。
 開発から生産までの全工程を日本国内自社工場で対応しており、日本国内に技術開発拠点を置くお客さまの要望に、迅速な対応を行ってまいります。

4. PEEK押出製品 

 当社は米国ZEUS 社(ズース社、以下、ZEUS)とアライアンス契約を締結し、同社製品の販売権を取得しました。ZEUSは、欧米の医療機器市場で大きなシェアを有しており、高機能化・多様化が進む日本市場においても大きな期待が抱かれています。
 本報では、電気、医療、自動車、航空宇宙などの先端分野で優れた特徴を有しているPEEKshrink®(熱収縮チューブ)及びPEEK 絶縁ワイヤーを紹介します。
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4-1)熱収縮チューブ
4-1-1)特徴
 使用温度範囲が米国電気製品規格(NEMA MW1000)で約400℃までと、低温域から高温域までの使用を可能としています。また、優れた押出成形技術を活かした極小径・極薄肉厚にも対応しており、樹脂被覆用途の可能性を持っています。
4-1-2)用途
 PEEKの特性を活かし、被覆による絶縁・耐熱・保護・強度付加などの広範囲に使用可能です。
4-2)絶縁ワイヤー
4-2-1)特徴
 PEEK 絶縁ワイヤーは、PEEKを絶縁部材とし、線材と同時に押出被覆した製品です。厳しい環境下での使用を念頭に設計されており、高い信頼性が求められるモーターや発電機、更には変圧器などの磁気ワイヤーや巻線などで使用されています。
4-2-2)用途
 電気電子、石油掘削機器、自動車、航空宇宙、原子力及びその他の産業で使用されるアクチュエータ、発電機、モーター、及び変圧器用のコイル用電線などに使用されています。
4-2-3)製品特性
 以下に示すTable2、3の製品特性は、特定サイズでの参考値であり、機能を保証するものではありません。またPEEK 絶縁ワイヤーには米国NEMA 規格(NationalElectrical Manufacturers Association)で定められた値が無いため、ここではNEMA MW1000 基準でMW-16C(240℃)の最高温度に基づいています。
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4-3)ZEUSについて
 今回紹介したPEEKshrink®やPEEK絶縁ワイヤーを始めとしてZEUS 高機能製品は、電気・通信・機械・航空宇宙・医療などのあらゆる分野において採用されています。そして、ZEUSは創業から50 年間に蓄積した高分子化学における経験を活かし、高い水準の製品やサービスを世界に提供し続けています。

5. 参考文献

1) 本間精一 基礎から学ぶ射出成形の不良対策 ㈱工業調査会(2010)
2) 和歌山県工業技術センター編、現場で役立つプラスチック・繊維材料のきほん コロナ社(2010)
3) 齋藤学、バルカー技術誌 No.20 19-20(2011)
4)有本優、バルカー技術誌 No.26 24-26(2014)
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