PTFEナノファイバー不織布

PTFEナノファイバー不織布
研究開発部
辻 和明

研究開発部 メンブレン開発グループ
瀬戸口 善宏

1. はじめに

 ナノファイバーとは、繊維径が1μmを下回る極細繊維を意味し、その繊維の細さゆえ、ミクロン繊維では考えられなかった以下のような特長を有することが知られている。
 ① 空気の抵抗が非常に小さくなる 
 ② 比表面積が大きくなる
 ③ 超分子配列効果が得られる

 ナノファイバーの作製方法としては、様々な方法があるが、近年、エレクトロスピニング法にて工業化がなされている。  エレクトロスピニング
p13.1
法の原理をFigure1に示す。
 紡糸装置は、一般に直流高圧電源、紡糸口および、アースされたコレクターから構成されている。高電圧が印加された紡糸口からポリマー溶液が一定の速度で押し出され、コレクターに到達する際には、繊維径がナノレベルまで減少することによりナノファイバーが得られる。
 エレクトロスピニング法では一般的に溶媒に高分子を溶解させた紡糸液を用意しそれを紡糸することで得られる。しかし、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略)は溶媒に溶解させることが困難なため、エレクトロスピニング法を用いて紡糸できない材料のひとつとされていた。

2. PTFEナノファイバー不織布

 PTFEナノファイバー不織布は、特殊なエレクトロスピニング法によりPTFEディスパージョンから作られた繊維である。100% PTFEからなるPTFEナノファイバー不織布の製法技術については、米国ZEUS社が、世界ではじめて工業化に成功した。当社はZEUS社との共同開発体制の下、日本国内における用途開発を進め、その用途に合わせた製品改良を米国ZEUS社とともに進めてきた。
 本報ではPTFEナノファイバー不織布の製品と用途例を紹介する。

3. PTFEナノファイバー不織布の特徴

 Figure2にナノファイバー不織布のSEM画像(上:500倍、下:1000倍)を示した。PTFEナノファイバー不織布の繊維径は600-700nmの繊維径であり、汎用不織布と比較するとその繊維径の細さがわかる。
 その形態と製法に起因するさまざまな特徴を有する。

 ① 低圧損で高通気性を実現
    小繊維径化による抵抗の低減、
    不織布形態による高通気性
 ② 高い分級性能
    繊維径のばらつきが小さく、
   平均流量径分布幅が小さい
 ③ 高耐熱
   260℃まで収縮せず連続使用が可能
 ④ PTFE 100% バインダーレス
 ⑤ 高い耐薬品性 
    酸、アルカリ、有機溶剤で使用可
 ⑥ 撥水・撥油性
   ・親水化(コーティングタイプ)対応可
   ・他の材料(汎用不織布)との複層化にも
    対応
 ⑦  紡糸液にナノ粒子を混合することで
    複合膜が作成可能
p14.3

4. PTFEナノファイバー不織布 物性表

 Table1にPTFEナノファイバー不織布の物性表を示す。不織布の平均流量径(ポアサイズ)は、繊維径および厚みに依存する。1μm強から2.0μm程度のポアサイズに対応する。そのため、ガーレー値が低く、高い通気性が得られる。  エレクトロスピニング法で得られたナノファイバーは、安定した繊維径となるため、ポアサイズのばらつきが小さい。フィルターに使用した場合は高い分級性能が期待できる。不織布厚さは、ナノファイバーの堆積量を増すことで容易に調整が可能である。

p14.4

5. エアフィルターとしての評価

 PTFEナノファイバー不織布の評価として、空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄空気にする目的で使用するエアフィルターの一種であるHEPA(High Efficiency ParticulateAir Filter)、ULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)との膜の特性の比較評価を行った。
5-1)HEPAフィルターとの比較
 HEPAフィルターの評価方法として、JIS Z 8122 によって「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」と規定されている。
 一般的にHEPAフィルターとして使用されているグラスファイバーHEPAと比較した。結果をFigure3に示した。その結果PTFEナノファイバー不織布はグラスファイバーHEPAと比較して圧力損失を約1/2以下に低減させることができる。
p15.5
5-2)ULPAフィルターとの比較
 ULPAフィルター(Ultra Low Penetration Air Filter)の評価方法としてJIS Z 8122 によって「定格風量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルターと規定されている。
 一般的にULPAフィルターとして使用されている延伸PTFE膜(e-PTFE)と比較した。結果をFigure4に示した。
 その結果、PTFEナノファイバー不織布は延伸PTFE膜(e-PTFE)と比較して圧力損失を約1/5以下に低減させることができる。

p15.5-2

6. PTFE ナノファイバー不織布用途例

 以上に述べた特異的な性能より、PTFEナノファイバー不織布は様々な分野への用途が考えられる。
 ◆ 酸、アルカリ、有機溶媒などの液体フィルター
 ◆ 腐食性ガス、高温下で使用するエアフィルター
 ◆ クリーンな環境のエアフィルター (半導体用途)
 ◆ UF膜、NF膜の基材
 ◆ 電池用セパレーター
 ◆ ベントフィルターなど

7. おわりに

 PTFEナノファイバー不織布は、世界で初めて工業化された製品である。PTFEの素材の持つ特徴を生かした用途、小繊維径不織布の形態を最大限生かせる用途、エレクトロスピニング法という製法を利用した機能付与など、さまざまな視点で用途展開が可能と考える。顧客ニーズに合致した提案を行い、さまざまな用途への展開を進めることで、社会の発展に貢献したい。

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