半導体装置用シール材の酸素透過率に関する調査

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日本バルカー工業株式会社 先端産業開発部
吉田 勉

1.はじめに

 半導体デバイスの微細化・高集積化に伴い、ゲート絶縁膜の薄膜化が進められてきた。近年では、その高性能化も限界に達しつつ、原子層レベルでの膜厚制御が必要とされている。このレベルまで薄膜化が進められると、雰囲気中の酸素がシリコン基板との界面まで透過し、酸化シリコンが形成されるために均一な膜が形成されないという問題が起きる。
 これを解決するにあたって最も重要なことは、如何に雰囲気中の残留酸素を減らすかということである。その際に問題になるのが、チャンバの密封に使用されているエラストマーOリングの酸素透過である。高分子材料は金属材料とは異なり、表面層からのガス放出のみならず、内部における拡散吸収の寄与を大きく受ける。この拡散吸収がいわゆるガス透過であるが、こ れにより、高分子材料のガス透過は、金属材料と比較して大きく増加することになる。
 エラストマーのガス透過率は、原料ゴムの構造によるものだけでなく、ガス種、温度、架橋密度、充填剤等により大きく変わる。一般的に、半導体製造装置で使用されるふっ素ゴム(FKM)やパーフロロエラストマー(FFKM)は、シリコンゴム等の他のエラストマーに対してガス透過率は小さくなっているが、100~200℃ぐらいの高温で使用されることが多く、やはりガス透過の問題は無視出来なくなる。
 ここでは、現在使用されているFKMやFFKMについて、高温時の酸素透過率について調査した。以下に、その調査結果をまとめて報告する。

2.実験

2.1 実験装置
 図1にOリングの酸素透過試験装置の概略図を示す。一般的な真空排気系であるが、B-Aゲージ、メタルバルブを取り付けた2.4Lのチャンバを、主バルブを介してターボ分子ポンプにて排気する。チャンバは、放出ガスの影響を小さくするため、到達真空が得られるまで予め200℃にて1week程度ベーキングしておく。
 試験試料は、AS568-214のOリングを使用し、メタルバルブに取り付けられたSUSフランジに装着する。更に、試験試料の外周側にもOリングを装着し、試験試料との間の空間に酸素を充満させ
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て、酸素透過率を測定する。また、バックグランド測定時には、その空間を真空引きし、測定系の放出ガスおよび試験試料以外からのリーク量を測定する。SUSフランジは、所定温度に加熱出来るようにヒータを取り付ける。
2.2 実験方法
 測定はビルドアップ法にて行う。主バルブ、メタルバルブを開、V3を閉状態とし、SUSフランジ(試験試料)が所定温度になるまで十分に加熱する。その後、V1、V2を開状態として酸素を供給し、十分な拡散吸収が得られるように、その状態で3時間保持する。その後、主バルブを閉状態として、15分間のチャンバ内圧力変化を、B-Aゲージにて測定する。
 上記測定で得られた結果には、チャンバ等の放出ガスおよびその他のシール部位からのリークも含まれるため、その量をバックグランドとして測定する。基本的な測定方法は上記と同様であるが、V1、V2を閉、V3を開状態として、試験試料外周側も真空引きする。これにより、試験試料のガス透過は無視出来るほど小さくなるため、測定系の放出ガスおよび試験試料以外からのリークが測定出来ることになる。

2.3 実験条件
 主に、半導体用途で使用される4種類のFKM系材料と5種類のFFKM系材料にて測定を行う。また、SUSフランジ(試験試料)温度を、100℃、150℃、200℃として、すべての試料とすべての温度の組み合わせにて測定を行う。

3.実験結果

3.1 測定結果概要
 図2に測定結果の一例を示す。(a)が実際に得られた結果であるが、この値からバックグランドの値を差し引くことによって、(b)に示す酸素透過による圧力上昇カーブが得られる。

3.2 酸素透過係数
 3.1で得られたそれぞれの試験試料の圧力上昇カーブに対して、その傾きΔP/Δtにチャンバ容積Vを掛けることによって酸素透過量Qが求まる。

    Q = V ・ΔP / Δt

 また、その酸素透過量Qを用いて、次式の計算によって酸素透過係数Pを求める。

    P = Q ・d / { A ・( P1 - P2 ) }

 d :Oリング線径
 A:Oリングセンター周長×圧縮後Oリング高さ
(25%圧縮)
 P1:高圧側圧力(Oリング外周側圧力)
 P2:低圧側圧力(Oリング内周側圧力)

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 ただし、上式はあくまで近似計算で、圧縮されたOリングの断面特性を厳密に表現したものではない。

 上式により求めたそれぞれの試料のそれぞれの温度での酸素透過係数を、図3、4にまとめた。
 どの試料においても、温度の上昇に伴い透過が大きくなることがわかる。また、FKM、FFKMそれぞれについて、最も透過の大きいものと最も透過の小さいものでは、2倍程度の差がある。また、FKMの最も透過の大きいものとFFKMの最も小さいものがほぼ同等の透過で、FKMの最も透過の小さいものとFFKMの最も大きいものでは、1桁近い差になることがわかる。
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4.まとめ

半導体製造装置で使用されているエラストマーOリングについて、その酸素透過係数を測定し、次の結果が得られた。

(1)温度上昇に伴い、透過は大きくなる。
(2)同じFKM系の材料、同じFFKM系の材料でも、最大で2倍程度の透過の差がある。
(3)FKMとFFKMの透過を比較した場合、FKMの方が透過は小さく、最大で1桁近い差になる。

5.おわりに

 半導体製造装置の高機能化により、Oリングをはじめとするシール材に対する高機能化・高性能化の要求もますます大きくなってきている。酸素透過だけでなく、耐プラズマ性、低発塵性、耐熱性、非粘着性等についても、更なる改善が必要である。
 今後、これらの課題を解決するために、エラストマー材料には留まらず、広い視点でのシール製品の開発を行っていきたいと考えている。当社の開発するシール製品・シール技術が、半導体製造を通して社会発展に寄与出来るよう、今後も一層努力する所存である。

6.参考文献

 1)中村邦夫,“各種ゴムのヘリウムガス透過係数について”,バルカーレビュー,第20巻No.2

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