耐熱タイプ パーフロロエラストマー FLUORITZ®-HS

耐熱タイプパーフロロエラストマーFLUORITZ®-HS
シールマーケティング開発本部 シール開発グループ
岡崎 雅則

1. はじめに

 半導体製造装置の製造プロセスの多くは真空環境下において実施されている。この真空環境を作り出す上で、シール材は非常に重要な役割を果たしており、従来より、ふっ素ゴム(FKM)やパーフロロエラストマー(FFKM)が耐熱性、耐プラズマ性、純粋性、低放出ガスなどの特性の面から主に用いられてきた。近年、半導体の回路パターンの微細化、高集積化、多層化、及び三次元化が進み、それに伴い製造プロセスも複雑化してきており、シール材にとってもこれまで以上に過酷な環境下での機能発現が求められるようになってきている。そのため、これらの厳しい環境下においては従来のシール材では性能が不足するケースが見られ、特に耐プラズマ性、耐熱性などが必要とされる部位にはより高性能なパーフロロエラ ストマーが使用されるようになってきている。
 当社では、技術革新が進む半導体製造装置環境へ対応できるシール材として、耐プラズマ性、非粘着性、純粋性、耐熱性に優れた無充填系パーフロロエラストマーFLUORITZ®-TRを上市し、バルカーテクノロジーニュース2011年夏号で紹介したが1)、今回はエッチング装置やCVD装置の高温部位 や拡散装置など、高温下における使用を想定して、独自の材料設計技術、及び加工技術を駆使し、耐熱性を従来品より向上させ、非粘着性、純粋性、低放出ガス特性に優れた耐熱タイプパーフロロエラストマーFLUORITZ®-HSを開発したので紹介する。

2. FLUORITZ®-HSの特長

 FLUORITZ®-HSは従来のパーフロロエラストマーと比較して、耐熱性を大幅に向上させ、非粘着性、純粋性、低放出ガス特性に優れた製品である。以下に、FLUORITZ®-HSの各種特性を紹介する。
2-1)耐熱性
 シール材の耐熱性を評価する代表的な指標の一つとして、圧縮永久歪率が用いられる。圧縮永久歪率は、Figure1に示した方法により算出され、シール材の劣化による塑性変形の度合いを表したものであり、圧縮永久歪率が小さいほど良好なシール特性を有していると判断され、一般的に圧縮永久歪率80%をシール限界と考えて寿命評価する2)。 Figure2にFLUORITZ®-HSの300℃における圧縮永久歪率測定結果を示した。FLUORITZ®-HSの圧縮永久歪率は、従来のパーフロロエラストマーと比べ、非常に優れており、より長寿命化が期待できる。
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2-2)固着特性
 一般的に、エラストマーシール材は金属などの相手材に固着しやすく、リッドなどの開閉部位を開くために大きな力が必要となる場合や、ゲートバルブの動作遅れ、シール材の脱落などの問題が生じることがある。また、通常、フランジの開閉は、高温時ではなく、冷却された後に行われ、高温から常温付近に冷却された後のシール材の固着力は非常に大きな値を示す場合が多い。そのため、シール材には固着力が低いことが求められる。
 固着力測定方法概要をFigure3に示し、FLUORITZ®-HSの固着力測定結果をFigure4に示した。FLUORITZ®-HSは、従来のパーフロロエラストマーと比較して、低い固着力を示しており、フランジへの固着、脱落などを低減できると考えられる。
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2-3)含有金属成分
シール材がプラズマ環境で使用されると、プラズマによるエッチングにより、シール材の体積減少が起こる。シール材に金属成分を多量に含有した充填材を使用している場合、エッチングにより金属成分が飛散し、パーティクルエラーなどの不具合を起こすことが考えられる。Figure5にFLUORITZ®-HSの含有金属測定結果を示した。FLUORITZ®-HSは、充填材配合系の材料でありながら、従来のパーフロロエラストマーより、金属含有量が少ない材料である。
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2-4)放出ガス特性
 真空シールとして使用される場合、シール材からの放出ガスが多いと、真空の立ち上げ速度や到達真空度の低下を招く要因となることがある。また、ウェハー表面の汚染など、クリーンな真空環境を形成する上での阻害要素となることも考えられる。そのため、シール材には低放出ガス特性が求められる。able1にGC-MS(ダイナミックヘッドスペース法)により測定した放出ガス量測定結果を示した。FLUORITZ®-HS の放出ガス量は検出限界以下で、放出ガスは検出されず、従来のパーフロロエラストマーと比較して、低放出ガス特性に優れる。
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2-5)機械的特性
 Table2にFLUORITZ®-HSの機械的特性を示した。FLUORITZ®-HSは優れた機械的特性を有している。
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3. FLUORITZ®-HSの用途

 FLUORITZ®-HSは従来のパーフロロエラストマーと比較して、優れた耐熱性を有することから、耐熱性が必要とされる様々な高温環境に適用可能である。以下にFLUORITZ®-HSの用途事例を示した。FLUORITZ®-HSは、以下に示したように半導体製造装置分野の高温環境のみならず、一般産業用途における高温環境のシール材としても使用可能である。

 ・ 半導体製造装置や液晶製造装置分野におけるエッチング装置やCVD 装置の高温となる部位のシール材
 ・ 拡散装置、LPCVD、アニール装置等の高温プロセスが行われる装置のシール材
 ・ プラント、化学工業、分析機器等において高温環境で使用される装置、部位のシール材
 ・その他、耐熱性が要求される装置、部位のシール材

4. おわりに

 半導体製造装置におけるシール材の使用環境は、回路パターンの高集積化、多層化、3 次元化に伴う製造プロセスの複雑化、高温化により、ますます、厳しくなっていくと思われる。これらの使用環境に適したシール材を今後も開発していきたいと考えるが、そのためにはユーザー各位からのシール材使用環境の情報が不可欠であり、ご協力をお願いしたい。
 なお、本文中のデータは、当社における一定環境での評価データの一例であり、すべての使用環境に適合するわけではない。そのため、実際の使用に際して、使用環境での評価を実施し、特に高温環境においては、十分に適性を確認した上で使用して頂きたい。

5. 参考文献

1) 岡崎 雅則 バルカーテクノロジーニュース2011 年夏号 P8(2011)
2) 川村敏雄:バルカーレビュー, Vol26, No.6(1982)

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