釘打ち機用ゴム緩衝材

釘打ち機用ゴム緩衝材
シール開発本部 開発グループ
犬田 雅之

1. はじめに

 ゴム緩衝材は、稼働する部材による衝撃を吸収するために、各種装置や工具などに幅広く組み込まれている。身近なところでは、靴底、家具の脚底などがある。その他にも、空圧、もしくは油圧式シリンダを搭載した装置や、ショックアブソーバ、釘打ち機などが挙げられる。釘打ち機とは、空圧シリンダ内に内蔵されたピストンを駆動させ、釘、針、ネジなどを打ち込む工具である。ゴム緩衝材には、組み込まれる装置の使用環境に応じた特性が要求されるため、用途に応じて様々なゴムが使用されている。(釘打ち機に搭載されるゴム緩衝材は、ピストン運動を繰り返し行う打撃ピストンの衝撃を吸収し緩衝するのが目的であるため、耐衝撃性が求められる。)釘打ち機用ゴム緩衝材は、繰り返される衝撃、発熱、摩擦、疲労によって徐々に劣化し、最終的に破損に至るため、使用回数に応じて交換する必要がある。
 ゴム緩衝材には、水素添加ニトリルゴム(HNBR)、ウレタン、またはニトリルゴム(NBR)などが用いられることが多い。一般的に、HNBR及びウレタンは、NBRと比べて機械的特性に優れるため、これらを用いたゴム緩衝材は、耐衝撃性に優れる傾向にある。しかしながら、これらの材料はNBRと比較すると高価である。
 今回、HNBR、ウレタンより安価であり、従来のNBRよりも釘打ち機用緩衝材としての耐久性能を大幅に改善したNBR材料(当社材料識別番号:B0985)を紹介する。

2. 釘打ち機用ゴム緩衝材の特徴

2-1)耐衝撃性
 当社製釘打ち機用ゴム緩衝材には、No.B0985のNBRを用いている。このゴム緩衝材は、NBRでありながら、非常に優れた耐衝撃性を有している。一例として、当社No.B0985、A社製NBR、及びB社製NBRの、釘打ち機用ゴム緩衝材耐久試験結果をFigure1、耐久試験条件をTable1に示す。図中の耐久回数とは、ゴム緩衝材を釘打ち機実機に装着して作動試験を続け、打撃ピストンが正常に作動しなくなったときの累計作動回数を示している。当社製釘打ち機用ゴム緩衝材は、他社製よりも耐久回数が大幅に増加し、長寿命であることがわかる。
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2-2)諸物性(常態物性、耐熱性、耐油性、低温性)
 No.B0985の諸物性をTable2にまとめる。参考として、当社ラインアップの中でも標準的なNBRで、特に油空圧機器の分野で実績のある材料(1種B適合材料:No.B0390、1種A適合材料:No.B0570)の諸物性も併せて示す。No.B0985の常態物性は、No.B0390、No.B0570と比較して、引張強さ、100%引張応力が高い値となっている。一般的に、100%引張応力が高いゴムは伸びが小さくなる傾向にあるが、No.B0985は、100%引張応力が高く伸びも大きいことから、機械的特性に優れた材料であるといえる。また、各種試験結果から、No.B0390、No.B0570と同様に、耐熱性、耐油性に優れており、耐圧縮永久歪性も良好なことから、ゴム緩衝材としての用途に限定せず、シール材への利用も十分可能と考えている。低温性試験結果では、No.B0985のTR-10は-23℃であり、No.B0390、No.B0570と比較すると若干低温性に劣るため、これらの代替材料として使用する場合には、十分な注意が必要である。
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3. No.B0985の用途例

 No.B0985は、釘打ち機用ゴム緩衝材のような、繰り返し衝撃を受ける個所への使用に適したゴム材料である。その他にも、機械的特性が良好なことから、従来のNBRでは物性不足のために早期破損してしまうなどの問題があった個所や、NBRより機械的特性に優れるが、高コストとなるHNBRやウレタンを選定せざるを得なかった個所への利用が期待出来る。これらを考慮し、No.B0985の用途
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例をTable3に示す。No.B0985の耐油性は、2-2)項で示した通り、当社実績のあるNo.B0390、No.B0570と同様に良好なため、釘打ち機のような空圧シリンダを備えた装置に限定せず、油圧シリンダの使用環境にも適しているといえる。また、緩衝材以外の用途として、各種シール材が挙げられる。一般的なOリングに加え、油空圧機器用のピストンシール、ロッドシール、ダストシールなど広く展開出来ると考えている。

4. おわりに

 本報では、釘打ち機用ゴム緩衝材が、ゴム材料として安価なNBRでありながら、優れた耐衝撃性を有していることを紹介した。しかしながら、機器メーカーごとに、型式、スペック、製品形状、寸法は異なるため、ゴム緩衝材の耐久性(累計作動回数)は大きく変動すると考えられる。そのため、各種形状、使用条件に合わせて評価試験を実施する必要があると考えている。また、No.B0985は、その用途を空圧式の釘打ち機用ゴム緩衝材に限定せず、油圧装置での使用や、繰り返し衝撃が生じる個所への使用、各種シール材への応用など、多くの可能性を秘めた材料であり、広範囲な展開を進めていくことで、社会の発展に寄与していきたいと考えている。

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