回転機器用シールの開発No.7740LFRシリーズPAT.

回転機器用シールの開発No.7740LFRシリーズPAT.
研究開発部 シール開発グループ
   南  暢
  永野 晃広

1. はじめに

 回転機器に用いられる油空圧用のシールは、機器の設計や性能に大きな影響を及ぼす重要な役割を担っている。特に、ここ近年では機器メーカーも市場競争が激化する中で、機器自体の性能向上はもちろんのこと、高性能で長寿命、低価格であることが強く求められるようになり、我々シールメーカーに対しても業界の要求に応えるシールの開発が望まれてきた。
 回転機器用のシールとして求められるのは、前提として漏れ防止機能があり、①取り付けスペースのコンパクト化、②回転トルクの低減、③耐圧性の向上、④寿命の長期化、⑤装着性の向上、⑥低価格、が挙げられる。しかしながら、これまでのシールでは、これら①~⑥項の全て満足するものが無く、いずれかを妥協するしかなかった。
 そこで当社ではこれらの問題を解決するべく、①~⑥項の全てを満足させた回転機器用の軸シールとしてLFRシリーズPAT.を開発した。なお、本開発では回転機器用として回転や揺動する軸のシールをターゲットとして取り組んできたが、LFRシリーズPAT. は往復運動やヘリカル運動などの他用途にも 対応可能な万能で高機能なシールであると考えている。

2. これまでのシールの問題点

これまでのシールの問題点をTable.1に纏める。
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3. 回転機器用軸シール〔LFRシリーズPAT.〕

 本稿で紹介する回転機器用の軸シール〔LFRシリーズPAT.〕は、さまざまな問題を解決して業界の要求に応えるべく開発を行った。以下に開発品の解説を行う。
3-1)デザインコンセプト
開発品LFRシリーズPAT.のコンセプトは、前述の問題点①~⑥項を解決することにある。

 デザインコンセプトを以下に示す。

① 小スペース
 汎用性を考慮して、シールを取り付ける溝は規格Oリングの溝寸法と共通とする。
  ・JIS B 2406 「円筒面に使用する場合の溝寸法」に準ずる。
② 低トルク
 軸と摺動するシールの内面に摩擦係数の低い樹脂を同時成型する。さらにシール自体の緊迫力を抑えることと、軸との接触面積も小さくする形状検討により低トルクとする。
③ 高耐圧
 シールが軸との隙間へはみ出して破損することを防ぐために、はみ出し対策を講じる。
④ 長寿命
 はみ出し対策と摺動抵抗を抑えることにより長寿命とする。
⑤ 簡単装着
 装着間違いを防ぐために、シールの方向性を持たない両圧シール形状とする。  
 バックアップリングを必要としない、1ピースのシールとする。
⑥ 低価格
 製造方法と構成部品の削減により低価格を実現する。
3-2)シールデザイン
 デザインコンセプトを忠実に実現するために、シールデザインはFEA(Finite Element analysis有限要素法解析)を用いて実施した。この結果、今までに類を見ない形状のシールを開発することが出来た。
1) 構成
 Fig.1に開発品の構成を示す。  開発品の構成は、弾力性に優れたエラストマー材を基部として、内面に低摺動の樹脂材を設ける。エラストマー材と樹脂材を同時成型することにより、1ピースとすることで装着性の向上を図る。

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2) 形状
 Fig.2に開発品の断面形状を示す。
 開発品の断面形状は、上部と下部の形状を対称とする。各部位は、外径側に向けてボリュームが小さくなるようなテーパー状の直線を上下面に持ち、シール面となる内外面に設けた円弧状の曲面と結ぶ構成である。
 なお、内面の樹脂形状は、中央部を薄くして上下端部にボリュームを設ける。

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3) デザインに関する詳細解説
 開発品のデザインに関する詳細を解説する。
 開発品のデザインは、規格Oリングの溝寸法(JIS B2406)に準じて行っている。ベースとなるのは規格Oリング(JIS B 2401)であるが、①小スペース、②低トルク、③高耐圧、④長寿命、⑤簡単装着、⑥低価格を実現するために、次のデザインを施す。

①小スペース
 バックアップリングを併用しない規格Oリングの溝寸法(JIS B 2406)に準じた小スペースで開発することが出来た。
②低トルク
 内面を低摺動の樹脂材とすることで摩擦係数を小さくし、基部となるエラストマー材の外径側のボリュームを小さくすることと、シール面となる内外面の形状を円弧状の曲面とすることで、緊迫力の低減を図る(Fig.3)。
 さらに、シールに流体圧力が作用する場合には、シールのテーパー面が溝の側面に接触する傾きにより、内面に設けた円弧状の曲面の接触面積を低減させる働き(Fig.4)において、回転トルクを低減することが出来た。

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③高耐圧
 樹脂の端部にボリュームを設けてバックアップリングの役割をシール自体に持たせることで、軸との隙間への耐はみ出し性が向上(Fig.5)し、高い耐圧性が得られた。
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④長寿命
 ②低トルクと③高耐圧を図ることで、長寿命を実現することが出来た。

⑤簡単装着
 構成部材を同時成型することで1ピースとしたことと、両圧用としてシールの方向性を無くすことで、装着を簡単にすることが出来た。
 また、バックアップリングの併用を不要とした。

⑥低価格
 バックアップリングの併用を不要とした。

4. 機能評価

 <ベンチテストによる検証>
 ベンチテストとして軸径φ100mm用の試料において
1000kmの耐久評価試験を実施した。
 テスト条件及び結果をTable.2に示す。
 この結果、コンセプト通り、①小スペース、②低トルク、③高耐圧、④長寿命、⑤簡単装着 であることが検証された。

①小スペース
 ・バックアップリングを併用しない規格Oリングの溝寸法(JIS B 2406)

②低トルク
 ・低トルクを実現(起動トルクが低い)
 ・軸の回転がスムーズ(起動トルクと摺動トルクの差が小さい)
 ・高圧〔14MPa〕でもトルクが比較的小さい(圧力増加に伴うトルクの増加が少ない)

③高耐圧
 ・高圧〔14MPa〕でもバックアップリングが不要

④寿命の長期化
 ・長期にわたって漏れ量が極めて少ない
 ・低摺動、低摩耗である

⑤簡単装着
 ・JIS規格のOリングと同等

5. 実機での使用に際して

 本開発は規格Oリングの溝寸法(JIS B 2406)に準じたシールとして行ったが、同様の技術を用いてあらゆる溝寸法に合わせた専用設計も可能であると考える。
 シールの構成材料も求められる機能から、耐薬品性や使 用環境の温度条件により変更することも可能であると考える。本形状及び本材質の構成により、①小スペース、②低トルク、③高耐圧、④長寿命、⑤簡単装着、⑥低価格 の全てを 実現した回転機器用の軸シールが提供できるものと考える。

6. おわりに

 今までに考えられていた回転機器用の軸シールでは、全てを満足することが困難であった前述の①~⑥項を、この度の開発では独創的な形状と構想により、汎用性の高い規格Oリング溝にそのまま適用可能な、万能で高機能なNo.7740LFRシリーズPAT.において実現することが出来た。
 今後は、本開発品を往復運動やヘリカル運動などの他用途にも対応可能なものとする用途開発に取り組んで行きたいと考える。

 <往復運動用途>    <ヘリカル運動用途>
   ・油圧シリンダ     ・工作機器
   ・空圧シリンダ     ・射出成形機
   ・その他        ・その他
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