特殊グレード架橋PTFEの紹介

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1. はじめに

 PTFEは、高機能プラスチックとして耐薬品性、耐熱性、絶縁性、非粘着性、低摩擦性などさまざまな特性を有する優れた材料である。また、応用範囲は広く、半導体分野、化学プラント分野、自動車、OA機器などの各分野で幅広く用いられている。
 しかし、さまざまな特性を有するPTFEでも耐摩耗特性、耐クリープ特性に関しては十分ではなく、特に軸受けなどの摺動部分に用いられたときに、自身が激しく損傷してしまうなどの問題がある。一般にこれらの用途には、ガラス繊維などの充填材の添加によりその特性を補ってきた。
 その一方で、特殊法人日本原子力研究所(現・独立行政法人日本原子力研究開発機構、以下原研と言う)では、PTFEがある特定の条件下で架橋できることを世界で初めて確認した。この架橋技術及びその特性について、原研・日立金属㈱殿で検討が進められ、PTFEを架橋することで耐摩耗性、耐クリープ性が大幅に向上することが認められた。
 本報では、まず架橋PTFEの主な特徴を述べた後、現在供給可能な製品を挙げる。
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2. 架橋PTFEの特徴

2-1)摺動特性
 第1の特徴は耐摩耗性の向上である。Figure2に架橋PTFE、ガラス繊維入りPTFE、純PTFEの比摩耗量の比較を示す。比摩耗量は、摩耗した厚さを摺動時の条件である速度、圧力、時間で割った値のことであり、この値が小さいほど摩耗が少ないことを表している。また、相手材の材質として、ステンレス鋼、アルミを取り上げ、それぞれの場合について、比摩耗量を示す。
 相手材がステンレスの場合、架橋PTFEと純PTFEを比較すると比摩耗量が1/10000となっており、大幅に耐摩耗特性が向上していることが分かる。また、相手材がアルミの場合、ガラス繊維入りPTFE、純PTFEに対しても1/1000 程度となっており耐摩耗特性において優位にあることが分かる。
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 また、Figure3に試験後の相手材の表面粗さを示す。ガラス繊維入りPTFEでは摺動部分が大きく凹んでいることが確認できる。このように、ガラス繊維入りPTFEでは、耐摩耗特性の向上が期待できる半面、アルミなどの軟質性材料の表面を大きく削ってしまうことが問題となる。架橋PTFEでは、相手材への攻撃性は抑えられ、このような問題は大きく改善される。
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2-2)耐クリープ性
 第2の特徴は耐クリープ特性の向上である。Table1に架橋PTFEのクリープ特性を示す。
 架橋PTFEの圧縮クリープはPTFEとの比較で約1/3、ガラス繊維入りPTFEとの比較で約1/2であり、耐クリープ特性においても優位であることが認められる。
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 また、PTFEが本来有する特性、耐薬品性、比粘着性、絶縁性などについてはそのまま保持しており、まさにPTFEを凌駕する材質と言える。

3. 製品ラインアップ

 以上のように優れた特性を持つ架橋PTFEであるが、現在加工用途向け素材として以下の製品が供給可能である。
<材料グレード>エクセロン®XF1B
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4. おわりに

 今回、架橋PTFEの特徴について概観してきた。PTFEはそれ自体さまざまな特徴を持つが、更に上をゆく新素材「架橋PTFE」に興味を持って頂ければ幸いである。この新素材が更に幅広い分野で使用・活用されることを切に期待する。

 なお、本報は日立電線技術誌「架橋ふっ素樹脂材料および応用製品」1)の内容を一部編集したものである。本報掲載にあたり、ご協力頂きました日立金属(株)殿関係各位に心より感謝申し上げます。

5. 参考文献

1)草野、浅井、瀬戸川 日立電線 技術誌、No.20(2001)
2)架橋ふっ素樹脂 「エクセロン®」カタログ
(注) 日立電線(株)は2013 年7月に日立金属(株)と合併し、日立金属(株)電線材料カンパニーとなった。
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