優れた耐熱性を有する マイカフィラーうず巻形ガスケットNo.M590シリーズ

優れた耐熱性を有する-マイカフィラーうず巻形ガスケット
シールマーケティング開発本部 シール開発グループ
黒河 真也

1. はじめに

 うず巻形ガスケットは、高温高圧用として設計されたセミメタルガスケットであり、優れたシール性や耐熱性と高い信頼性から、石油化学、石油精製、造船、鉄鋼など、幅広い分野に使用されている。当社では2006年より、耐熱性に優れたマイカフィラーを用いたうず巻形ガスケットを販売しており、高温流体のシール材としてユーザーにご好評いただいている。近年、石油化学プラントにおける分解炉の高収率化や火力発電における発電効率向上に伴い、耐熱性の高いシール材の必要性は飛躍的に高まっている。そこで改めて、耐熱性に優れたマイカフィラーうず巻形ガスケットの製品紹介を行う。

2. 特徴

2-1)ガラスクロスレスマイカフィラー
 マイカは鱗片状の天然鉱物であり、その分解温度は900℃以上ときわめて高い耐熱性を有する。しかし、マイカ自身には結着力がないため、マイカをフィラーとして加工するためには、結着材である有機成分とともに、補強材としてガラス繊維のクロスを用いたものが一般的である。
 しかし、ガラス繊維は、高温水蒸気雰囲気下で重量減少をおこし強度低下することが知られており、また、バインダーとのぬれ性が悪いため微小な空隙ができやすく、この空隙が漏洩経路となりシール性に影響する。そのため、耐蒸気性とシール性を考慮するとガラス繊維を排除する必要があるが、当社では、ガラス繊維を排除するために補強材を必要としないフィラー開発を行った結果、十分なフィラー強度を付与するためマイカ粒子の形状を最適化し粒子同士を緻密に積層化することにより、マイカフィラーうず巻形ガスケットに優れた耐蒸気性とシール性を付与することができた。

2-2)耐熱性に優れたクロスレスマイカフィラー
 本開発においては、ガラス繊維を使用しないだけでなく、粒子同士を結びつける結着材をも減らすことにも成功し、耐熱性能を左右する有機成分を大幅に低減することができた。その結果、当社のマイカフィラーうず巻形ガスケットは、極めて優れた高温シール性を有するものとなった。
2-3)酸化性流体に適用可能
 うず巻形ガスケットの高温用途の一つとして溶融塩系熱媒体(HTS)が挙げられる。HTSは、高温で用いられること、そのため熱交換効率が高いこと、また消防法上非危険物扱いであることなど多くの利点がある反面、酸化性を有しているため、シールに用いる素材として膨張黒鉛や無機質フィラー材などでは劣化による漏洩リスクがある。このHTSに対しても、クロスレスマイカフィラーは酸化する成分を極限まで低減しており有用である。
p17.2-3

3. No.M590シリーズの用途

3-1)用途
 石油精製、石油化学などの各種工業用配管フランジおよび各種機器接合部などに適用する。とりわけ、流動接触分解装置(FCC)やエチレンプラント、高温加熱蒸気ラインなどの高温環境を有する箇所や、HTSを熱媒体とする熱交換器やポンプ、バルブなどに適する。

3-2)適用流体
 クラッキング装置における熱分解ガスや加熱蒸気などの超高温流体や、酸化性溶融塩からなる熱媒体(HTS)などに適用する。

4. 製品構成

 フィラーを全てクロスレスマイカフィラーとしたうず巻形ガスケットNo.M590シリーズと、クロスレスマイカフィラーの中間部にバルカホイル®フィラーを巻き込んだライン入り製品No.M590Lシリーズがある[Figure2]。金属製内外輪の有無により、以下の通り品番を定める[Table1]。
 高圧ガスなどの高い密封性が要求される箇所にはNo.M590Lシリーズ、HTSなどの酸化性流体にはNo.M590シリーズを推奨する。

p17.4-1
p17.4-2

5. 製品寸法

 JIS 10K~63K、JPI150lb~2500lbの他、ASMEなど各種規格管フランジ用に製作可能である。また、規格外フランジ用としてもTable2の範囲内で製作可能である。
p17.5

6. 使用可能範囲、設計資料

 マイカフィラーうず巻形ガスケットの使用可能範囲をTable3に示す。推奨締付面圧およびm, y値をTable4, 5に示す。
p17.6
p18.6-2
p18.6-3

7. 特性評価

7-1)フィラー加熱劣化試験(マイカフィラー)
 各種フィラーを空気中で600℃に加熱し、その後の重量減少率を測定した[Table6]。マイカフィラーは加熱による重量減少が軽微であり、耐熱性に優れていることが確認された。
p18.7-1
7-2)No.M590シリーズの熱サイクルシール特性
 全量マイカ製品No.M596における600℃加熱後の熱サイクルシール試験結果をFigure3に示す。他社品は加熱後に大きな漏洩を示し、増締めの効果も乏しいが、No.M596は他社品と比較して優れたシール性を示しており、他社品と比較して高温シール性に優れていることが確認された。
p18.7-2
7-3)No.M590Lシリーズの熱サイクルシール特性
 ライン入り製品No.M596Lにおける600℃加熱後の熱サイクルシール試験結果をFigure4に示す。他社品は加熱直後から漏洩を示し加熱サイクルの増加に伴い漏洩量も増大しており、増締めの効果も乏しいが、No.M596Lは、熱サイクルを受けても長期間密封状態を保持しており、他社品と比較して優れたシール性を示すことが確認された。

p18.7-3
7-4)フィラーのHTS耐性
 各種フィラーを400℃に加熱したHTS へ浸漬し、その後の劣化状態を確認した[Table7]。クロスレスマイカフィラーはHTS 浸漬後も形状を保持し劣化状況は軽微であったことから、耐酸化性に優れていることが確認された。

p18.7-4
7-5)HTS浸漬試験(No.M590シリーズ)
 フランジ締結体の内側に流体としてHTSを封入し、420℃加熱下でHTSに加圧した際の漏洩有無を評価した[Figure5、Table8]。No.M590ではHTSの漏洩が見られず、酸化性流体への耐性が高いことが確認された。
p19.7-5-1
p19.7-5-2

8. 実績

 マイカフィラーうず巻形ガスケットの使用実績をTable9に示す。FCCやエチレンプラントなど600℃を超える事例も多く、高温蒸気やHTS用機器の実績もあり、高温用ガスケットとして十分な実績がある。
p19.8

9. おわりに

 今回紹介したマイカフィラーうず巻形ガスケットは、優れた高温シール性と酸化性流体への適性を有しており高温環境で使用可能とした製品である。危険性の高い領域でこれまでに無い高いパフォーマンスを発揮するハイグレードガスケットになったと自負している。
 今後ともユーザーの抱える困難な課題の解決に貢献をしていきたい。

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