中国における規格状況

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日本バルカー工業株式会社
中国シール研究所 馮 梅

1.はじめに

 中国は1957 年標準局(規格局)を設立1958年に初の国家規格を公布し、さらに1988年には「中華人民共和国標準法」を公布し、規格についても近代化を進めている。ただ、これまで日本企業にとって、中国規格はあまり馴染みがないであろうと考えられるため、本稿をもって、その概要を示すとともに、改訂作業等の現状を概説する。

2.中国規格の概要

2-1)規格の階層
 中国規格は中華人民共和国標準化法(1988)により国家規格、部門規格、地方規格、企業規格の4 階層に分類され、各規格は上位規格に従属関係を持っている。
 規格番号は規格コード番号と規格番号と公表年により構成される。
 国家規格は全国範囲での統一的な技術仕様を目的とした規格である。従来は強制的な傾向が強かったが、最近は任意規格に移行しつつある(強制、任意については2-2項規格属性参照)。所管部門は国家標準化管理委員会である。(図1)
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 GBは国家標準(ピンイン: Guojiao Biaozhun)の略語で、コード番号にTが表示されているのは任意規格、Tなしは強制規格を示す。
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 部門規格は、政府部門による全国範囲で統一に必要な技術仕様に対する、国家規格の補充のための規格である。所管部門は国務院行政部門(例えば中国機械連合会など)である。部門規格コードは表1を参照。
(例:SH3406-1996石油化学鋼製フランジ)
 地方規格は省、自治区、直轄市範囲での統一仕様を目的とした規格で、所管部門は地方質量技術監督局である。
(例:DB31/T229-1999熱媒油:上海市)
 企業規格は企業内の統一を行う技術規定、管理規定、業務規定に関わる規格である。法人の代表或いは代表から権限委託された幹部が管理する。企業規格は公布されたあと所管品質管理局へ届け出なければならない。
(例:Q/BYNJ3-2004)

2-2)規格属性
 前述のように、国家規格、部門規格、地方規格は強制規格と任意規格の2種類に分けられる。人体の健康、人身·財産の安全を保障する規格と法律や行政法規に定められた強制執行を伴う規格は強制規格であり、その他は任意規格となる。地方の規格主管部門が制定した工業製品の安全、衛生に関わる規格は当該地方では強制規格である。
 その他、ある領域の規格に適応するため、GB規格の補充として、“ 標準化指導性技術文書”がある。この文書のコード番号はGB/Zとなる。
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2-3)規格分類
 中国の規格は、部門と専門性によっても分けられる。部門分類では65種類(表1)に分けられ、専門性分類では技術規格、管理規格、業務規格3 種類に区分される。
 技術規格は技術事項の統一を目的とした規格で、製品規格、プロセス規格、検査規格、安全、衛生規格などを含む。
 管理規格は管理事項の統一を目的とした規格で、技術、経済、行政、生産、経営管理の規格を指す。
 業務規格は、組織の部門や職位について、その業務の責任、権限、範囲、品質要求などを対象とした規格である。
2-4)規格管理部門
 国家規格を例として、関連所管機関の関係を機関組織図(図1)に示す。
 各規格の制定· 改訂は、現在、約400ある標準化技術委員会(規格委員会)によって統括される。規格委員会は事務局と委員より構成され、委員は科学研究院、大学、生産会社などから構成される。事務局は日
本の場合、機械学会や各種工業会等の学協会が多いが、中国では国営研究院が多い。
 シールに関連する規格委員会と事務局及び関連する協会を表2に示す。規格委員会は協会からは独立した機関であるが、規格委員会の秘書長(事務局長)或いは主任(日本の規格委員会での委員長にあたる)は協会の理事長、事務員を兼任しており、委員会の活動を協会の作業として取り込んでいる。表2の事務局長は国営研究院に所属しているのが一般的である。
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2-5)規格の制定手順
規格の制定手順は概ね下記の流れである。
計画→提案(制定案)→作成→意見収集→審査→承認→出版
計画:規格制定、改訂の計画をつくる
提案:ワーキンググループを設立、調査し、作成プランを作成。
作成:規格草案を作成
意見収集:関連部門へ草案を送付、意見を集める
審査:会議審査或いは書面審査(会議審査が主体)
承認:標準化技術委員会から国家標準化管理委員会へ改訂草案を提出、承認していただく。
規格の制定· 改訂計画は国家標準化管理委員会より指示され、標準化技術委員会はその実務を担当する。

3.中国規格の現状

3-1)規格の制定・改訂の現状と課題
 中国規格には重複などの問題が多く、国家標準化管理委員会は2004年から一年半を掛けて、全規格の整理作業をした。2006年夏から規格の制定· 改訂作業が開始され、国家標準化管理委員会は各年度に国家規格の制定· 改訂計画を提出している。2007年度は7回提出され、8619件の規格制定· 改訂を予定しており(表3)、いずれも2008、2009年までが完成期限とされている。
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 2008年2月26日国家標準化管理委員会は「2008年20号文“ 国家規格制定· 改訂作業に関する通達”」を出した。内容は2006 年度第1回制定· 改訂を計画した9540件の規格の最終承認資料を5月15日までに提出すべしという内容であった。各規格委員会は、2月末から、慌しく規格の制定· 改訂作業に取り組むこととなった。筆者が2008年4月に出席したある規格審査会では、1日で15件の規格を審査した。締切期限が近くなったため、審査の前段階での意見聴取は行われず、3月のワーキンググループ会議の場でのみ意見を聴取しただけであった。結局審査会当日には反対意見が多く、議論は夜まで延長され、過酷な会議だったことを今でも覚えている。また同じ通達により、他の8724件の規格を2008年11月15日まで提出し、年内には全ての承認作業を終了する予定となっている。
 2008年は1万件の国家規格制定と9500件の規格改訂が予定されている。仮に400ある標準化技術委員会に平均分配し、制定期限1.5年間で計算すると、1標準化技術委員会当たり平均月3件の規格を制定· 改訂する必要がある。筆者の体験及び2008度計画から、少しでも中国規格の制定· 改訂の現状の一端を理解いただければ幸いです。
3-2)シール関連規格現状、改訂動向
 3-2-1)フランジ・ガスケット規格の現状
 国家規格或いは部門規格に国際規格(ISO)や海外規格を採用するのも一般的である。具体的な海外規格採用現状を表4に示す。
 フランジ規格の場合、国家規格(GB)にはISOを採用し、化工部門規格(HG)はDIN、ANSI規格、機械部門(JB)は旧ソ連規格(ドイツ系に属する)、石化部門規格(SH)はANSI規格を採用している。シール材などの物性試験方法にはASTM(アメリカ材料試験協会)を採用し、ガスケット試験はASTM、BS、独自方法からなっている。フランジ規格体系を表5にまとめた。フランジ、ガスケットについては国家規格よりも部門規格が多く使われている。
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 3-2-2)フランジ・シール規格の改訂動向
 国家規格の改訂は整理、統合が主体で、例えばGB/T15530.1“ 銅合金鋳鉄フランジ”では95年版の規格がGB/T2505-1989“ 船用鋳銅フランジ”との統合となった。また呼び寸法もPN*系単独からPN系とCLASS*系を併記した寸法表とした。ガスケット規格も統合され、フランジ改訂に応じた改訂を行った。
 中国ではいまだ石綿禁止が法律化されていないため、石綿はまだ使用可能であるが、国際的な非石綿化の動きを受けて、非石綿化の認識が高くなっている。規格の改訂でも“ 石綿材料を使用した場合、国家法律の規定に従い、保護処置をし、健康に被害を与えないことを注意する”などの文言を追加するようになった。またガスケットは材料、特性に関する規格の整備が進められており、新規材料の追加や、非石綿シール材料生産規格も制定が計画されている。試験規格はASTM規格を採用する傾向が強い。
* PN:呼び圧力 * CLASS:ASME 圧力
3-3)国際化の参加、進捗状況
 国家標準化管理委員会は、2010年までにISOの常任理事国入りを目標としていたが、2007年には、ISO規格制定への参画は500件程度になり、2008年10月16日ドバイで開催された第31回ISO大会で、中国はISOに対する貢献率が第6位にランクインされ、ISO常任理事国入りを果たした。2009年度ISO/TC5/SC10(金属フランジとその締結体Metallic flanges and their joints)年会は中国北京で開催が予定されており、全国管路附件標準化技術委員会(表2参照)はその準備を粛々と進めている。

4.中国規格の入手方法

 中国規格の入手ルートは下記にまとめた。但し、原本は全て中国語である。
 ①中国標準出版社(ネット販売可)
 http://www.bzcbs.com/
 ②上海標準化サービス情報ネット( ネット販売可)
 http://www.cnsis.info/
 ③(財)日本規格協会
 http://www.jsa.or.jp/
 英語タイトル検索は国家標準化管理委員会のホームページをご利用ください。
 http://www.sac.gov.cn/
 規格の貸出や、内容を確認しての購入に関しては、下記の標準化研究所をご利用ください。
 中国標準化研究院(北京)
 上海標準化研究所

5.おわりに

 最近、中国規格の制定· 改訂作業量はピークに達している。各規格委員会は国際· 海外規格の制定採用或いはISO規格活動への取り組み、より合理的、高レベルな規格制定を目指し積極的に行動している。本文の紹介で中国の規格体系や現状をご理解いただければ幸いです。

参考文献
1)「中国機械工業標準まとめ フランジ篇」
  中国標準化出版社
2) 李新華「フランジ用ガスケット実用ハンドブック」
  中国標準化出版社

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